2008/05/18(日)23:18
無垢な男と2人の美女★「白痴」
ロシアの文豪ドストエフスキーの大作を
巨匠・黒澤明監督が見事に翻案、映像化した傑作‥‥それが、'51年の「白痴」です。
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戦犯として処刑される寸前で命拾いしたものの、心に深い傷を負い、
持病の癲癇が悪化した青年・亀田(森雅之)は、遠い親戚のいる札幌へ向かう途中、
資産家のドラ息子・赤間(三船敏郎)と乗り合わせた。
雪降りしきる厳寒の札幌の街へ降り立った亀田は、
写真館のウインドウに飾られた美女・那須妙子(原節子)の写真に釘付けになった。
妙子の顔に形容しがたい哀しみと苦悩を見出したからだ‥‥
外国文学の翻案&映像化は、かなりむずかしいものらしく、
過去、多くの映画人が挑戦しては、失敗しています。
しかし、この「白痴」は数少ない成功例の代表格と言えるかもしれません。
主人公ムイシュキン公爵(亀田)も、囲われ者の薄倖の美女ナスターシャ(那須妙子)も、
高潔な令嬢アグラーヤ(綾子=久我美子)も、ぴったりハマっていました。
特に、子どものように純真無垢ゆえに、世間の人からはバカにされるけど、
限りなく美しい心を持つゆえに、妙子と綾子、二人の美女から愛される主人公・亀田を演じた森雅之の演技は、見事でした。
金持ちの二号・妙子を演じた原節子もすばらしかった。
あたら蕾の頃に父親くらいの年の男の慰み者にされ、
見かけは華やかに着飾り、御殿のような屋敷に住んでいても、
心はまるで終身刑の囚人のようで、荒れすさみ、
それでいて、気品を失わない不思議な妖婦‥‥お嬢様役がぴったりの原節子でなければ、演じられない役どころでしょう。
それにしても、この長い小説(文庫本で全4巻)を、よくここまで見事に映像化できたものです。
黒澤監督はドストエフスキーが大好きだったというけど、
よほど読み込んでいなければ、ここまでできなかったでしょうね。
「白痴」はモイラも大好きで、何度か読み返し、そのたびに涙しました。
主人公ムイシュキン公爵の台詞が長いけど(3,4ページにわたっている台詞もあります)
とても深く、読み応えのある傑作中の傑作です。
ロシア文学 ドストエフスキー 白痴