★モイラの名画座★

2010/01/06(水)23:36

鎖国時代に大国を見た男★「おろしや国酔夢譚」('92)

独断と偏見に満ちた映画評(600)

名匠・佐藤純彌監督が井上靖の小説を原作に撮った時代劇ですが、 舞台のほとんどが雪のシベリアとロシアです。 それもそのはず。 鎖国時代に船が難波して、アリューシャン列島に流され、 流浪の果てにやっと日本に帰って来た 当時としては、めっちゃ稀有な体験をした日本人の物語ですから。 1992年の「おろしや国酔夢譚」です。 おろしや国粋夢譚 特別版 / 緒形拳 大黒屋光太夫(緒形挙)ら伊勢の船頭たちは、回船で江戸へ航海中、 大嵐に見舞われ、数ヵ月後、北の果ての言葉の通じない異国人の島へ漂流した。 彼等は生きるために、まずロシア語を聞き取りで覚え、 なんとか日本に帰れるよう、ペテルブルグから派遣されていたロシアの高官たちに頼むが、 帰国への道のりは、途方もなく険しく、苦しいものだった。 しかしその間、小さな島国生まれの彼等は、とてつもなく広いロシアの文化に触れ‥‥ 長い漂流ののち、たどり着いたのが北の果ての、言葉の通じない島。 並みの人間ならそれだけでヘコむけど、 伊勢の船頭光太夫は、ロシア語を覚えることから始まって、 ロシア人たちとコミュニケーションをとり、 病気で寝込んだら、日本では「食べたら獣になる」と言われていた肉を、 我慢して食べ(相当勇気が要ったと思います)、 おまけに木で船まで作って、オホーツクの島を脱出するのですから、すごい! これにはロシアの高官たちも目を見張り、日本人を尊敬し始めるのです。 日本の船頭たちと、ロシアの高官たちや、シベリアの人々との交流が、 いささか美化されたきらいはあるけど、とても丁寧に描けていました。 沖田浩之演じる若い船頭・新蔵は、現地の美しい後家さんとくっつき、 また、放浪の果てに凍傷で片足を失った庄蔵(西田敏行)は、絶望して自殺しかけるのを 現地の女に止められ、やがて教会で祈る人々を見て、キリシタンとなり、 シベリアにとどまるくだりが、胸を打ちました。 日本に帰ることよりも、信仰を選んだのだからすごいです。 ロシアの大地の四季がまた美しかったですね。 女帝に拝謁する宮殿も壮麗だったこと! 光太夫は遭難したのは災難だったけど、とても貴重な体験をしたんですよね。 一生、一介の船頭として極東の島国で過ごすはずだった男が、 ひょんなことから、鎖国時代に大国ロシアを見てきて、 歴史にその名を刻む‥‥人生、ほんと何が起こるかわかりません。 名優緒形挙が、大国を見てきた鎖国時代の日本人を、 見事に演じていたのは、言うまでもありません。 ロシア語の台詞には、結構苦労したでしょうね。 最初、この映画が上映された時、モイラは前に観た佐藤監督の「敦煌」が、 正直、ひどい出来だったので、さほど期待していなかったんです。 だけど、これは感動しました。 しかし‥‥「北京原人 Who are you?」‥‥あれはひどすぎます。 マジで監督、ボケたのかと思いましたね。 ★モイラが選んだ佐藤純彌監督の名作★ 新幹線大爆破(DVD) ◆20%OFF! 君よ憤怒の河を渉れ(DVD) ◆20%OFF! 西田敏行 / 佐藤純彌 / 植村直己物語 【DVD】 送料無料!!【Blu-ray】人間の証明(Blu-ray Disc)/松田優作 マツダ ユウサク

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