カテゴリ:独断と偏見に満ちた映画評
こんばんは、映画狂のモイラでございます。 今宵お届けする名画は、名匠・岡本喜八監督の隠れた名作 「江分利満氏の優雅な生活」でございます! 山口瞳の同名小説の映画化作品です。 原作本はこちら! ↓↓ サントリーの宣伝部に勤務する36歳の冴えない会社員・江分利満(えぶり まん 小林桂樹)氏は、 神奈川県川崎市のテラスハウス風の社宅に、 妻・夏子(新珠三千代)と一人息子の庄助(矢内茂)と老父の明治(東野英治郎)との4人暮らし。 江分利氏は大変な酒好きで、会社で何か嫌なことがあると、トリスバーに行き、 かなり酩酊するまで飲む。 ある夜、江分利氏はベロベロに酔った状態で、バーに居合わせた文芸雑誌社の編集者男女と同席し、 彼らに言われるままに、小説を書くことを承諾してしまった。 しかし江分利氏は酔いがさめた途端、原稿依頼のことなどすっかり忘れてしまい、 再び編集者男女と夜の街で出会った時、早く原稿を書くように言われ、困惑した。 困惑した挙句、彼は私小説を書くことに決め、 「江分利満氏の優雅な生活」と題して、自分の冴えないサラリーマン生活や家族のことなどを 原稿用紙に書き始めるのだが…… 小林桂樹演じる江分利満氏の欠点が、まず数字に弱いこと、 紐の花結びができず、靴紐がろくに結べないこと、 ひどい音痴であること、 青を緑、緑を青と呼んでしまうこと、 テープレコーダーの操作も出来ないほど機械音痴であることというのが、面白かったですね。 時は昭和38年の高度経済成長期…… 当時の庶民には高価だった冷蔵庫やステレオが月賦だという設定に、時代を感じてしまいました。 さかのぼること12年前、まだ戦後の傷跡が残っていた昭和26年に江分利氏と夏子が結婚し、 新婚旅行先は熱海と決めていたのはいいけど、宿を予約してなくて、 あちこちの温泉旅館から宿泊を断られるくだりには、ちょいと呆れました。 そのシーンで、アンクルトリス(若い方はご存じないでしょう)で知られている柳原良平のアニメが、 とても面白く効果的に使われていましたね。 佐藤勝の音楽も、秀逸でした。 銀座のレストランで、江分利氏が八カ月になった息子の庄助にマカロニを食べさせて おいしそうに食べるわが子を見て、 「ああ、もう俺は自殺を考えることも出来ないんだな……」と思うシーンには、ちょっとほろりとしましたね。 江分利満氏という戦中派の中年男の悲哀をあたたかい視点で描いた傑作です。 「本当に偉いのは、一生懸命に生きている奴だな。江分利みたいな奴だよ」 というモノローグには、大いに頷けました。 ただ不満もあります。 それは、いわゆる山師だった老父の明治のことを、あまりに多く描きすぎていることです。 そこをもう少し削って、江分利氏の悲哀をもっと前面に描けていればなあ……と思いました。 この作品、最初は川島雄三監督がメガホンをとることになっていたのですが、 川島監督が急死してしまい、急遽、岡本監督が引き受けることになったのです。 岡本監督が得意とするコメディの中でも、戦中派の悲哀を前面に出したこの作品は、 意外にも観客動員数が少なく、映画は1週間で打ち切りになりました。 でもモイラは、この映画が大好きです! にほんブログ村 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 9, 2024 08:19:25 PM
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