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ベルリオーズ:19「イタリアのハロルド」
さて、このパガニーニ、既存の曲では自分のテクニックを見せることもできないというので、ほぼ全てが自作の曲であった。協奏曲はもちろん、演奏旅行先のヒットソングを主題とした変奏曲は絶大な人気を誇った。そんな演奏家なのに、何とベルリオーズに曲を依頼したのである。1833年の12月22日、「幻想交響曲」を聞いて、当時として超前衛的な音楽に新しい世界を求めたのであろう。 パガニーニはストラディバリウスのヴィオラを手に入れ、その演奏のための管弦楽伴奏の作品を依頼してきたのであるが、途中で喧嘩別れになった。パガニーニは自分の演奏を聴かせるための作品が欲しいのだが、ベルリオーズは芸術的に高い物を求めてしまったのだ。パガニーニは、 「私は休んでなんかいられない。最初から最後までずっと弾いていたいのだ。」 というようなことを言ったという。莫大な謝礼がふいになってめげるベルリオーズではない。それなら全ての制約が無くなったのだから、本当に自分の思うがままに曲を作り上げようと思うのである。 そして完成したのが『イタリアのハロルド』である。交響曲の4楽章という形式をとりながら、協奏曲のようにヴィオラが登場する。それでいて協奏曲のような大活躍はせず、管弦楽の中に埋没して行く。バイロンの詩「チャイルド・ハロルドの巡礼」に着想を得たもので、『幻想交響曲』の恋人の主題のように、「ハロルドの主題」が全楽章に登場する。1834年11月23日の初演。 長くなったのであまり詳しい解説はやめておこう。 第1楽章「山におけるハロルド。憂鬱、幸福、そして歓喜」 序奏つきのソナタ形式。夢見る青年という主人公は『幻想交響曲』にも通ずるものがある。ヴィオラが協奏曲風に活躍するのはこの楽章のみ。後はソロであってもオーケストラの中で目立つという程度になる。 第2楽章「夕べの祈祷を歌う巡礼たちの一行」 巡礼の一行が歌いながら通り過ぎるのを眺める場面。 第3楽章「アブリッチ山人が愛人によせるセレナード」 牧童が吹く角笛の民謡を使ったという説があるが、その民謡を説明してくれる資料はない。単純なメロディの繰り返しだが、『幻想交響曲』よりとっつきやすい。 第4楽章「山賊の饗宴と追憶」 ハロルドは山賊の饗宴に飛び込んで死に、山賊の大暴れで曲を閉じる。主人公が死んでいるのだから、ソロのヴィオラは回想的にしか登場しない。それが「追憶」なのだろう。 『幻想交響曲』よりは明快で、展開も分かりやすいので、ぜひ聞いてほしい作品であるが、あまりに特異な曲で、ヴィオラのソロというのも当時はなかなか受け入れられなかったため、演奏機会も少なかったようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.12.07 09:22:19
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