【粗筋】
巣鴨に住む吉田監物の奥家老・堀越与左衛門の次男・与右衛門は、11歳で越中の分家の跡取になるが、21歳になると江戸が恋しい、実母に会いたいと、置手紙を残して江戸へ向かう。実父が形見に残した脇差が親子の証拠。宇多の宿に泊まると、下の座敷から聞こえる歌が素晴らしい。19歳の磯という娘で、江戸から能登へ向かう途中だという。夜に厠へ行くと、座敷にその娘が向こうを向いているのが見えた。帰りに見ると灯りが消え、声にほれ込んだ与右衛門は部屋に忍び込む。確かに声の主、思いを伝え、気持ちに偽りがない証拠に父の脇差を渡して関係を持つ。翌朝、主人に話をすると、幼い頃に病で倒れ、煮え湯を浴びたため髪の毛は生えない、顔ははれ上がった化け物のようになったと言う。今更断ろうにも、父の脇差を渡してしまった。
磯を連れて宿を出て、市振にある難所・親不知までやって来る(ここから鳴り物)。預けた短刀を返して欲しいと言うと、江戸までは守護として持っているように仰いました、と応える。短刀を抱えているのを見て、鞘だけを抱かせて、脇差を抜く(鳴り物、波音に代わる)。「夫の言いつけに背く女房、離縁いたす。いずれへなりとも失せるがよい」といわれ、奪われた刀を取り戻そうとする。抜身の刀をつかんだため、磯の指が切れる。その指では三味線も杖も持てぬ、いっそ楽にしてやろうと、磯に斬り付け、崖下に投げ込む。
この場を去ろうとすると、日焼けした漁師らしいのが、「この人殺し」とつかみかかって来た。振り払って逃げる与右衛門、残った男は、引きちぎった与右衛門の片袖を手に、「よい物が手に入ったなあァ」と、与右衛門を見送る。
【成立】
三遊亭円生(2)作。原作では後ろ幕で親不知の崖を描いてあるのが、落ちて農村に代わる。三遊亭円朝が、これを参考に「真景累ヶ淵」に作り上げている。林家彦六(正蔵8)が演じたが、今は林家正雀が演じている。「累草紙」とも書くが、資料では「草子」となっている。「親不知の場」と付けているもの多い。