【粗筋】
宿に泊まろうとしたが満員、無理に頼むと、夜中に目を覚まさないのであればと、いうおかしな条件で物置の隣に案内された。ところが枕が変わったため目を覚ましてしまい、物置で声が聞こえるのをのぞいてみると、傘が一本ある回りで、男が女を追いかけている。つかまえて押さえつけるが、あわやというところで女はまた逃げる。ぐるぐる回るのを見ているうちに、旅人は目を回してしまった。
翌朝になって尋ねると、先代の主人がけちで、奉公人をこき使ったが、ある村から来た男女が親しくなったのを、傘一本だけ与えて追い出したという。その男女が心中をすると、毎夜主人の枕元に二人の亡霊が現れるので、心中した場所に残っていた傘を物置に安置したというのである。
「だから、物置に出るのは、その傘の化け物なのです」
「なるほど。道理でさせそうでさせなかった」
【蘊蓄】
破戒僧が寺を追い出される時には傘一本のみを持たされた。これから「傘一本」といえば、僧侶が追放されることをいう。