【粗筋】
ジャズ三昧の息子に義太夫好きの父親が意見するが、考え方の違いで全くかみ合わない。息子を2階へ追いやって、父親は気分転換に義太夫の稽古を始めた。
息子の方はその隙に友達を窓から上げて、ジャズ演奏を始める。次第に義太夫がジャズに引っ張られるので、親父の方も気が付いて2階に上がってくる。
「いったい何だこの騒ぎは」
「これはジャム・セッションだよ」
「何、ジャム……ああ、それで親を甘くなめたんだ」
【成立】
「浄瑠璃息子」を改作したもの。義太夫とジャズの両方を表現しなければならない音曲噺(?)。川柳川柳が演じる。もちろん本人の改作。
最近の噺家はテンポの良い語り口がない。高座で考え考え話されるともう心はどこかへ行ってしまう。真打でさえそうで、噺に入ると口馴れたものを感じるが、ほとんどの演者は枕がたどたどしい。最近のように、楽屋話や小噺だけで一席を演じる場合などは聞くに堪えないことが多い。たまたま川柳師匠の前後にそんな人がいて、ふと感じたことをメモしていた。
【蘊蓄】
ジャズの流行は昭和の初期。国産では西條八十作詞、中山晋平作曲で佐藤千夜子の「東京行進曲」が歌謡曲大ヒットの第1号となった。「君恋し」もジャズで、千夜子が歌ってヒットしている。「君恋し」は戦後ブルースにリズムを変え、水原弘の歌で再ヒット、第1回レコード大賞を受賞した。受賞の知らせを聞いた水原弘の言葉。
「レコード大賞?……何だいそりゃァ」
戦時中はジャズは禁止されたことになっているが、現実には黙認であったという。