【粗筋】
寺の住職が毎夜酒を飲んでいるのを知った権助、御馳走になろうと押しかけて来た。住職は、「実はこの徳利を供養しているのだ」と話を始める。古道具屋で手に入れたが、口が欠けているので醤油を入れて置いた。すると、夜中にこの徳利が水瓶に入っている。
「話を聞いてみると……」
「徳利が話をするんですか」
「ちゃんと口がある」
噺を聞くと、能登の百姓だったが、酒好きで家を売り払い、家族からは愛想をつかされ、それでも酒が飲みたいと、思い付いたのが備前徳利。備前徳利は岡山の墓土でを使うとか……それなら向こうで死ねば徳利に生まれ変わっていつでも酒が入っている……と思い立って、後は野となれと能登を出て、備前に行くと、金も力も使い果たし、ありがたいことにその場で野垂れ死に。皿になる気はさらさらないし、便器にされたら運のつき、思いが通じたのか、無事徳利に生まれ変わったのはいいが、口が欠けて口惜しや、古道具屋に売られたというのだ。
「徳のあるご住職だから私の話も伝えられた。嫌ではございましょうが、毎日一升の酒を入れて飲んでくれというのが、一升徳利の一生のお願いだと言うのだ」
権助すっかり丸め込まれて帰って行くが、住職一人になると、備前徳利が、
「もし、和尚さん、酒を飲むのにいい口実を考えましたねえ。いつの間にあんな出鱈目を思い付いたんです」
「酒を飲んでいるのを見付かった時の言い訳にしようと、以前(備前)からとっくり考えておいた」
【成立】
石倉昌子の作品を、桂小南(2)が演じた。権助が人がいいのか、この説明に納得しちまうんだなあ。それだけの語り口で説得しないと腑に落ちないし、落ちは説明っぽいし……もう演じる人もいないだろうな。
