【粗筋】
バー「ヒマラヤ」、その名の通りお高い店の雪江という女、何度もデートに誘うが、冷たいそぶりではっきりしない。何とか口説けないかと、仕事中も考え込んでいたら、部長に呼ばれる。
「半年前に取引先の相手にバーに連れて行かれてね。その店の子を口説こうと思うんだ」
「部長はお酒は飲めないんじゃあ」
「いや、店の雰囲気もいいし、これまた雰囲気がいい子がいてね」
「はい、酒を飲むならビヤガーデンでいいんで、バーは雰囲気を味わうんです。部長のような方にはお勧めですね。女の子を横に置いて、こちょこちょこちょ……」
「変なことをするなよ。気持ちが悪い」
「私も部長では興奮しません。とにかくバーに行くのはお勧めで……でも、部長には奥さんが……まあ、あのチンケな奥さんじゃあ……」
「何だね」
「いえ、神経質な奥さんですから」「そうなんだ。家内に知られたら大変だからねえ」
「はい、奥さんは神経質そうで、案外うすらば……うっすら気付くこともありますから……ま、とにかく、その……相手の女は何て店の子ですか」
「ヒマラヤってお店の雪江という子なんだ」
「えっ……部長、部長のような方がそんな女と付き合うのはいかがかと……いかがわしい店に出入りするのは……」
「さっき勧めたじゃないか。とにかく、今度取引先との麻雀で家に来るだろう。家内にこのことは言わないように頼むよ」
さあどうしよう、奥さんに伝えれば、お礼にお小遣いももらって一挙両得……いや、あの奥さんはケチだから出さないかも知れない。部長にお雪って子はあばずれで、とんでもない子だと言おうか……いや、どうしてそんなことまで知ってるんだって言われると……
給料を前借りしてヒマラヤへまっしぐら。だまして海外に売り飛ばそうとしている中年男がいるから気を付けろと言って、今度付き合ってくれるという約束の実行を迫ると、お雪さん、実は私には夫も子供もあるから駄目だと言う。大急ぎで部長に進言すると……
「夫と子供……それは違うな。子供はないぞ。夫といってもやくざ者でな……そうそう、若い真面目なサラリーマンが夢中になっていて、色々誘うのを柳に風と受け流していたが、そのサラリーマンに諦めてもらうよう、夫も子供もあると告白する筋書きを書いたんだ」
「へえ……部長がそれをお書きになったんですか」
「わしじゃない。君のかみさんだよ」
【成立】
田部あきらの作品を、桂好太郎が演じた。主人公の奥さん、よくこんなことを企んだなあ。うちのかみさんなら、バー通いが分かった時点で即追い出されるだろう。
