【粗筋】
自殺しようとしたOLを止めた者がいる。
「放して下さい。私死ななければならないんです」
「あんな男のために死ぬことはない」
「なぜ知っているの……」
と考えてみると、ここはマンションの最上階。そこのベランダから飛び降りようとしたのだ。
「どこから入ったの」
「屋上からロープで……」
実はストーカーで、昼間はいつも部屋に入って洗い物をしたり、夕立が来て洗濯物を取り込んだりしていた。スマホのラインやメールも全部読んで、部長と関係して妻と別れると言われていたが、妻が妊娠したのでOLとは別れることにしたのだということも知っている。
なぜストーカーになったか……高校時代に同級生だったが、彼女が引っ越すことになり、クラス全員に手紙をくれた。彼にも……花壇の係になってヒマワリを育てている姿が記憶にあって、優しい人だなと思っていたと書かれていたのだ。それから十年、コンビニ店員として再会したが、彼女は全く覚えていない。それでストーカーになったと言う。
「うちのベランダに、種を蒔いていないヒマワリが花を咲かせたのはあなただったのね」
話をしていると、パトカーが駆け付け、男は逃げてしまう。マンションのベランダで男女がもめているという通報があったのだ。女は経緯を説明するが、警察では何だか分からない。
「その後コンビニに行っても彼の姿を見ることはなかった。あなたのお爺さんと結婚して、あなたのお父さんが産まれ、あなたがいるのよ。この家もお爺ちゃんの家」
「でもお爺ちゃん死んじゃって、寂しくないの」
「お庭を見てごらん」
「うわあ、一杯のひまわり」
【成立】
桂かい枝の創作落語。評論家はみんな心温まるいい話だと絶賛しているが、私にはストーカーの気味の悪い話としか思えない。現代人の心の闇を描いているのだろうか。
