落語「ま」の40:豆屋(まめや)
【粗筋】 豆屋になったばかりの男、長屋で声を掛けられた。「幾らだ」「50銭で」「高いから負けろ」「60銭のところを口開けで50銭と申し上げたんで」「負けないというなら……」と薪ざっぽうを持ち出すので、「幾らにするんです」「5銭だ」「ああ、5銭負けて45銭」「重い荷を担いで5銭なら、家で寝てたほうがいい」また薪ざっぽうを振り回す。「負けます。じゃあ、これで」「最後に升の上でお焼香をしたのは何だ」「これ、平らにしたんです」「生まれる子供の鼻がぺちゃんこになるぞ」と山盛りにさせて5銭しか払わない。 呆れて先へ行くと、もっと怖い顔の男に声を掛けられる。「いくらだ」「5銭です」「嬶ぁ、心張棒持って来い。こんないい豆が5銭の訳はない。盗んだんだろう」「本当は50銭なんで」「50銭でも安い。60銭にしろ」「へえ、実は60銭なんで」「なぜ山盛りにする。子供が生まれたら天狗のようになる。可愛い顔にしたかったら豆の鼻をけずれ」「平らにしました」「中をえぐれ……掻き出せ……逆さにしてひっぱたけ」「空になりました」「俺んとこじゃ買わねえんだ」 【成立】 安永3(1774)年の『茶のこもち』の「不精」。私の子供の頃に桂文治(10)、柳家小三治がよく演っていた。宇井無愁は「何でこんな咄ができたのかわからない」と言う。確かにその通りで、子供の頃は商人をいたぶって何が面白いのか分からなかったが、大人になってみると……さっぱり分からない。