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助産婦メモルの日常~Happy Birthな毎日~
小さなお義兄さん
小さなお義兄さん
俺は次男。
・・・でも、それは戸籍上のこと。
・・・ほんとは三男なんだ。
俺も詳しく知らんけど、一番上の子どもは亡くなってるらしいわ。
男の子やったらしいわ。ほんまなら3兄弟やったらしいわ。
そんな話をだんなから聞かされたのは、互いの両親の顔合わせの少し前だったように思う。
だんなの両親にはそれまでも何回も会ったことはあった。
最初にお会いした時に「助産婦になりたいと思っています。」と伝えた。
お義母さんもお義父さんも「ええ仕事や思うわ。頑張って。」と言ってくれた。
助産婦学校に合格した時も、国家試験に合格した時も、就職が決まった時も、
まるで本当の親のように喜んでくれた。
「結婚しても子どもができても、仕事は一生続けるつもりです。」と言った時も、
「うんうん。その方がいいと思う。家事も育児も分担したらいい。あんたが頑張りや~。」
とだんなをけしかけてくれた。
そんなお義母さんは天使ママでもあった。
そんなお義父さんは天使パパでもあった。
戸籍には載っていない、だんなの一番上のお兄さんの話をしてくれたのは、つい先日のこと。
妊娠中も特に問題ないと言われていた。
出産も初めてだから時間はかかったが、決して難産だったわけでもなかった、と言う。
・・・ただ違ったことは・・・、生まれた赤ちゃんは産声をあげなかった。
医師が足の裏をたたいたり、背中をたたいたりしていたが、結局一度も声をあげることなく、そのまま天使になった。
原因は分からないまま。
医師からは心臓か肺に問題があったのではないかと説明された。
「今なら妊娠中に分かる病気も当時は分からんかったやろうし、分かってたところで同じ結果やったんかもしれん。」
死産の扱いになったので、戸籍には残っていない。
「だけど、一番上にお兄さんがも1人いたんよ。」
そう義母は何度も繰り返していた。
「初めての子どもが亡くなるなんて・・・、泣いても泣いても涙が止まらんかったわ。
医者は余計につらくなるから子どもには会わん方がいいって言ったんやけど・・・。
こっそり看護婦さんが連れてきてくれてなぁ。
ほんのちょっとやけど抱かせてもらった。」
そんなお義母さんだから、そんなお義父さんだから、
メモルが助産婦になることを、助産婦であることを応援してくれていたのだった。
そして何より嬉しかったことは、お義父さんとお義母さんは今でも月命日には必ずお墓参りに行っている。
2人の子どもが手のかかる頃には、2人揃って毎月はなかなか難しかったようだが、
子どもたちが成人してからは、また2人で毎月行っているそうだ。
初めての子どもを亡くしてから、もう30年以上になる。
その間もずっと忘れられることなく、両親に愛されていたのだ。
メモルは助産婦という仕事をしながら、たくさんの天使たちに会ってきた。
たくさんの天使ママ、天使パパに会ってきた。
そうか、あの天使たちはこれから何年も何十年もずっとずっとあのママとパパに愛されていくんだ。
そのことに今さらながらに気付いて、とても嬉しかった。
来月の月命日にはぜひ一緒にお墓参りに行こうと思う。
小さな小さなお義兄さんに「はじめまして。これからもよろしく。」のあいさつをしようと思う。
だって、メモルも家族になったのだから。
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