ただうれしい
守りたかった命ただうれしい。あなたは確かに神様にママのお腹を紹介してくれたんだね。あなたの妹が生まれたよ。パパも男泣きだよ。「ついついね、あの子の名前で呼んじゃうんですよ。あ、ちゃうちゃう、って言い直したりして。だんなさんも一緒なんですよ。不思議ですよね。あれからもう6年も経っていて、あの子はもっともっと小さかったし、こんな大きな声を聞くこともできなかった。こんなに長い時間一緒に過ごすこともできなかったし。でも私の中から消えることはないんですよ。この子が生まれてさらに存在感が大きくなってきたかも。忘れないでよ、って言ってるのかな。忘れるわけないのに。」そう言ってあなたのママは笑ってた。そうだそうだ、この笑顔だ。見通しのつかない、長い長い安静生活。でもあなたのママはいつも笑ってた。「この子ね、すっごい大泣きしてても、ふと泣き止むんですよ。一点を見つめて。あの子が来てくれてるのかな、とか思っちゃいます。」ただうれしい。あなたのことをこんな風に笑って話ができること。メモルはこの6年間あなたのことを忘れたことはなかった。いつかあなたがママのお腹を神様に紹介してくれて、あなたのママとパパが、あなたの弟か妹を抱っこして、あの時のような笑顔をメモルに見せてくれる日がいつか絶対くるって信じてた。「手術の傷は痛いけど、2回目だからこういう風に動いたらちょっとでもましかなってのが分かる。」あー、こんなところでもあなたは親孝行してるんだね。ただうれしい。あなたはお姉ちゃんになったね。あなたの妹を抱っこして、思い出した。そうだ、メモルはあなたを抱っこしてあげることができなかったんだ。こんな風に抱っこしてあげたかったな。ただうれしい。あなたのママは、メモルをちゃんと覚えててくれたよ。あなたが作ってくれた絆をこれからも大切にしていくよ。あなたは確かに生まれたね、そして確かに生きてたね。これからも生きてるよ。ママの中にも、パパの中にも、妹の中にも。そしてメモルの中にも。これからもママとパパとかわいい妹を見守っていてあげてね。