2008/07/13(日)17:22
くまとやまねこ
くまとやまねこ
~著者湯本香樹実さんからのコメント~
この『くまとやまねこ』は、ずいぶん長い時間をかけてできあがった絵本なのですが、
できあがった今、時間をかけたかいがあったなあと心から思えるし、
この絵本で私が書きたかったことも、やっぱり「時間」なのだな、
とあらためて感じています。
身近な人が亡くなることも含めて、大事な何かを失うというのは、
自分自身の一部が死ぬことと等しい。
死んだ自分を抱えている間は、時間が止まってしまったようにも思えるけれど、
時間は実はきちんと流れていて、なにもしていないように見える人にも、
深い変化をもたらしているのではないでしょうか。
この絵本のなかのくまが、悲しみに閉じこもり、
でもやがて外に出かけていったように、
必ず死んでしまった自分自身の一部も、
またよみがえる時がくるんだという、
そういう時間というものへの深い信頼と感謝の念が、
私にこの小さな物語を書かせてくれたのだと思います。
酒井駒子さんの素晴らしい絵によって、
くまやことりややまねこや、命あるものすべてに流れる時の一刻一刻が、
一頁一頁、このうえなくいとおしいものとして描き留められました。
お読みいただけましたら幸いです。