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2024.11.10
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春樹は無事に高校生活をスタートし、新しい友人や環境に恵まれて、毎日が充実していた。しかし、ある日、いつも明るく元気なクラスメイト・大輔の様子がおかしいことに気がついた。彼は春樹の中学時代からの友人で、お互い励まし合いながら受験を乗り越えた仲だった。

それがここ数日、いつもと違ってどこか沈んでいるように見えた。休み時間も一人でぼんやりしていることが多く、部活にも顔を出さずに帰ってしまう日が続いていた。クラスメイトの間でも「大輔、どうしたんだろう?」と噂になるほどで、春樹も心配になっていた。

放課後、帰り道でばったり大輔に会った春樹は、思い切って声をかけることにした。「なあ、大輔、最近元気ないけど、何かあったの?」と問いかけると、大輔は一瞬驚いた表情を見せたが、やがて苦笑いを浮かべた。

「いや、ちょっと…まぁ、いろいろあってさ」と、大輔は言葉を濁しながら答えた。その曖昧な返事に、春樹は言い出しにくい事情があることを感じ取ったが、無理に聞き出すことはしなかった。ただ、「困ったことがあったら、いつでも話せよ」とだけ伝え、彼と別れた。

その夜、春樹は「どうやったら大輔を元気づけられるだろう?」と考えていた。ふと頭に浮かんだのは、「梅屋」のおばあさんが話していた、大福を通じて心を通わせるという言葉だった。もしかしたら、大福を贈ることで、彼の気持ちを少しでも軽くしてあげられるかもしれないと思った。

翌日、春樹は放課後に「梅屋」を訪れ、おばあさんに事情を話した。「友達が元気をなくしているみたいなんです。何か元気づけられるような大福、ありますか?」と尋ねると、おばあさんは少し考え込んだあと、奥から鮮やかな包装に包まれた大福を取り出して見せてくれた。

「これは、特製の『元気出し大福』さ。みかんを使ったあんこが入っていて、ほんのりとした酸味が心をリフレッシュさせてくれるんだよ」と、おばあさんはにっこり微笑んだ。春樹はその大福を見つめ、「これなら大輔も喜んでくれるかもしれない」と感じた。

次の日、春樹は放課後に大輔を誘い、校舎裏のベンチに腰かけた。そして、鞄から「梅屋」の大福を取り出し、「これ、食べてみないか?」と差し出した。大輔は一瞬驚いたような顔をしたが、春樹の温かい笑顔に安心したのか、素直にその大福を受け取った。

「なんだこれ、珍しいな」と言いながら、大輔は一口かじってみた。その瞬間、みかんの爽やかな酸味が口の中に広がり、驚きと共に顔がほころんだ。「これ、すごく美味しいじゃん! こんな大福、初めてだよ」と、彼は少し元気を取り戻したように見えた。

春樹はその表情にほっとしながら、「実はさ、おばあさんが特別に作ってくれた元気出し大福なんだ」と種明かしをした。そして、「何かあったなら、話を聞くくらいはできるから、遠慮しないで言ってくれよ」と優しく語りかけた。

大輔はしばらく黙っていたが、やがてぽつりと口を開いた。「実は…俺、最近彼女と別れたんだ」と、重い口調で話し始めた。彼にとって初めての恋愛で、相手のことを本気で好きになっていただけに、失恋のショックが大きかったのだと語った。

「そうだったのか…それは辛いよな」と春樹は大輔の肩を叩き、寄り添うようにうなずいた。大輔は「情けない話だけど、まだ気持ちが整理できなくてさ」と、ため息をついた。

そんな彼に、春樹は「でもさ、どんなに辛くても、一つずつ乗り越えていけば、きっとまた前を向けるようになるよ。俺も、応援するから」と励ました。大輔はしばらく黙っていたが、やがてうなずき、「ありがとうな、春樹」と感謝の言葉を口にした。

それからというもの、少しずつ大輔は元の明るさを取り戻し、春樹と一緒に過ごす時間も増えていった。春樹は、ただ一つの大福を贈ることで友人の心に寄り添えたことに、心からの喜びを感じていた。そして、改めておばあさんの言葉が真実であることを実感した。

「大福は、人の心を繋ぐものなんだ」

春樹はその日の夜、また「梅屋」に立ち寄り、おばあさんに大輔のことを報告した。「ありがとう、おばあさんのおかげで、友達も元気になってくれました」と感謝を伝えると、おばあさんは目を細めて微笑んだ。「大福は、ただ甘いだけのお菓子じゃない。贈り手の気持ちが込められることで、相手に伝わるんだよ。君も大福を通して、友達の心に寄り添えたんだね」

春樹はその言葉に深くうなずき、また一つ大切なことを学んだ。大福はただの和菓子ではなく、贈る人の思いや、相手への愛情を形にするものだということ。これからも大切な人たちに、心を込めた大福を贈りたいという気持ちが、彼の胸の中に強く根を張ったのだった。







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最終更新日  2024.11.10 07:40:40
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