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2024.11.10
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春樹が高校2年生に進級した春、クラス替えで出会った新しいクラスメイトの中に、一人の気になる存在が現れた。彼女の名前は美咲。優しく穏やかな雰囲気と、真剣に話を聞く姿勢に、春樹は次第に惹かれていった。彼女の笑顔を見るだけで胸が高鳴り、自分の気持ちが恋だと気づいたときには、既に彼女のことを目で追ってしまう自分がいた。

しかし、春樹にとって、初恋は思った以上に難しく、彼女と話をするだけでも緊張してしまう。仲良くなりたいと願いつつも、彼女にどう接すればよいのか分からず、ただもどかしい思いだけが募る日々だった。

そんなある日、クラスの文化祭実行委員に選ばれた春樹は、美咲と一緒に準備をする機会が増え、自然と話す時間が増えていった。彼女はいつも柔らかく笑い、周囲に気を配って行動する姿がとても魅力的で、春樹はますます彼女に心を奪われていった。しかし、いざ二人きりになると、緊張で言葉が上手く出てこなくなり、気の利いた話題も思いつかない自分に、少し落ち込むこともあった。

ある日、美咲が「実は私、甘いものが好きなの」と話しているのを耳にした春樹は、心の中である決意をした。美咲のために「梅屋」の大福を贈りたい、と思ったのだ。おばあさんの大福が、友人を励ましたときのように、美咲との距離を縮める助けになってくれたらと願っていた。

放課後、「梅屋」に足を運び、事情を話した春樹に、おばあさんは優しく微笑んだ。「それなら、この『初恋大福』がいいかもしれないね」と、少し照れくさそうに、特別な大福を見せてくれた。

「初恋大福」は、ほんのりピンク色で、桜の花びらを模した模様が美しくあしらわれていた。中には甘酸っぱいイチゴと白あんが包まれていて、春の爽やかさと共に、初恋のような甘酸っぱさが口の中に広がるのだという。

「この大福には、誰かを思う気持ちをそっと伝える力があるんだよ」と、おばあさんは少し照れたように語った。春樹はその言葉を信じて、丁寧に包んでもらった大福を手に取り、翌日、美咲に渡すことを決意した。

翌朝、登校した春樹はタイミングを見計らい、美咲を放課後に呼び出した。校庭のベンチで彼女が待っていると、春樹は少し緊張しながらも大福を差し出し、「これ…美咲さんに、食べてもらいたくて」と言った。美咲は驚いた表情を浮かべながらも、嬉しそうに微笑んで「ありがとう」と受け取ってくれた。

「これは『初恋大福』っていうんだ。イチゴと白あんが入ってて、春っぽくて、すごく美味しいんだよ」と説明すると、美咲は「初恋…大福?」と不思議そうに繰り返した。恥ずかしさで顔が赤くなりそうになりながらも、春樹は何とか微笑み返した。

美咲はその場で一口かじってみて、少し驚いた表情をした後、にっこりと微笑んで「すごく美味しい! この甘酸っぱさがたまらないね」と感想を伝えてくれた。その反応に、春樹の胸の中には安堵と喜びが広がり、「渡してよかった」と心から思った。

その後も、美咲とは文化祭の準備や日々の学校生活の中で少しずつ会話を重ねていった。大福を贈ったことで、以前よりも気軽に話しかけられるようになり、彼女も春樹に対して少しだけ打ち解けたような気がしていた。

文化祭当日、クラスの出し物が成功し、春樹も美咲と一緒に喜びを分かち合った。その帰り道、二人で片づけをしていたとき、美咲がふと「春樹くん、大福ありがとうね。あのとき、実は少し落ち込んでたんだけど、あの大福のおかげで元気が出たの」と打ち明けてくれた。

彼女の素直な言葉に、春樹は少し驚きながらも、「そうだったんだ。渡してよかったよ」と照れくさそうに答えた。美咲はさらに続けて、「甘くて優しい味だったけど、どこか心がほっとしたんだ。春樹くんの気持ちが伝わった気がしたよ」と微笑んだ。

その言葉に、春樹はまた一つ大切なことを学んだ。贈り物とは、ただ物を渡すだけでなく、心を込めて相手を想うことが大切なのだと。自分の想いが美咲に少しでも伝わり、彼女の心を癒すことができたなら、それだけで満たされる気持ちだった。

その夜、春樹は再び「梅屋」を訪れ、おばあさんに報告した。「おばあさんのおかげで、気持ちを伝えられた気がします」と感謝を伝えると、おばあさんは静かに微笑んで「それはよかったね。大福は、贈り主の心をそっと伝えるための橋渡しになるんだよ。君が心を込めたからこそ、彼女に届いたんだろうね」と優しく語りかけた。

春樹はその言葉を心に刻み、美咲との距離が少しずつ近づいたことに幸せを感じた。そして、自分の中で芽生えたこの恋心を、これからも大切に育てていこうと決意した。







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最終更新日  2024.11.10 07:43:41
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