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2024.11.10
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高校2年の秋、春樹のクラスに転校生がやってきた。彼の名前は武田翔太。親の仕事の関係で地方から引っ越してきたらしい。翔太は無口で控えめな性格のため、あまり自分から話しかけることはなく、クラスでもどこか孤立しているように見えた。春樹はそんな彼の姿に、なんとなく親近感を覚えた。

放課後、翔太が一人で校庭に座っているのを見かけた春樹は、勇気を出して声をかけることにした。「一緒に帰らないか?」と誘うと、翔太は少し驚いた顔をしたが、やがて小さくうなずき、一緒に歩き出した。歩きながら、翔太が今までどんなところで過ごしてきたのか、故郷のことなどを少しずつ話してくれた。

「俺、昔からこの町に住んでるから、他の場所のことってあまり知らないんだ。どんなところだったの?」と春樹が尋ねると、翔太の表情が少しだけ明るくなり、「山がたくさんあって、夏にはホタルも見れるような場所だったよ」と懐かしそうに答えた。その様子に、春樹は翔太が故郷を恋しく思っていることに気づいた。

それからしばらくして、翔太が「東京の食べ物はおいしいけど、なんか、故郷の味が恋しいよな」とぼそりと呟いたのを聞いて、春樹はふと思いついた。故郷の味や家族のぬくもりを感じさせるようなものを、翔太に贈りたいと考えたのだ。

その夜、春樹は「梅屋」に足を運び、おばあさんに相談した。「故郷を思い出せるような大福って、何かありますか?」と尋ねると、おばあさんは一瞬考え込んだあと、「それなら、この『故郷大福』がいいかもしれないね」と、特別な大福を取り出して見せてくれた。

その大福は、ほんのり茶色がかったお餅で、特製の黒糖あんが包まれていた。おばあさんによると、黒糖の甘さには懐かしさを感じさせる効果があり、故郷を思い出す味わいを持っているという。春樹はその話を聞いて、「これなら、翔太も喜んでくれるかもしれない」と思い、大切に包んでもらった大福を持ち帰った。

翌日、放課後に翔太を再び誘い、「これ、君に贈りたいんだ」と言ってその大福を差し出した。翔太は驚いた顔で春樹を見つめたが、「ありがとう」と少し照れくさそうに受け取ってくれた。そして、春樹の前で一口かじると、柔らかいお餅の中から、甘くて深みのある黒糖あんが口いっぱいに広がった。

「この味…なんか懐かしいな」と、翔太はしみじみと呟き、少しだけ目を細めた。その表情を見た春樹は、彼が故郷や家族のことを思い出していることに気づき、静かにうなずいた。「おばあさんが作ってくれた大福なんだけど、懐かしさが伝わるようにって思って選んだんだ。故郷を思い出してくれたなら、よかったよ」と春樹が伝えると、翔太は「ありがとうな」と少し照れたように微笑んだ。

その後、翔太は少しずつ周りとも打ち解け始め、クラスメイトと話す機会も増えていった。春樹は、大福を通じて彼が少しでも安心できるようになったことに嬉しさを感じていた。そして、自分が大切な人たちに贈る大福が、彼らの心に届いていることに改めて感謝の気持ちを抱いた。

その夜、再び「梅屋」を訪れた春樹は、おばあさんに報告した。「翔太も大福を気に入ってくれて、故郷を思い出せたみたいです」と感謝を伝えると、おばあさんは優しく微笑んで「大福には、不思議な力があるんだよ。食べる人の心にそっと寄り添い、懐かしさや温かさを届けるんだ。春樹君が心を込めて贈ったからこそ、その気持ちが届いたんだろうね」と語った。

春樹はその言葉を胸に刻み、大切な人たちとの絆が深まっていくことを感じていた。そして、これからもこの特別な大福を通じて、誰かの心に寄り添い、温かさを伝えていきたいと強く思った。







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最終更新日  2024.11.10 07:45:52
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