KJESSのブログ

翌日、リナは早朝の静かな時間を狙って、店長のアキラに声をかけた。アキラは30代の温厚な性格で、職人気質のパティシエだった。リナはずっと尊敬しており、彼に相談すればきっと心に響くアドバイスがもらえる気がしたのだ。

「アキラさん、今年のクリスマスケーキ、特別なものにしたくて…アドバイスをもらえませんか？」

アキラは少し驚いた顔を見せたが、すぐに優しく笑って、「いいね。クリスマスケーキは特別だから、心を込めて作る価値があるよ。でも、特別って何だろう？」と問いかけた。

リナは少し考え込み、「うーん、そうですね…。私の中では、相手を思いやる気持ちが詰まっているケーキが特別なんです。食べた瞬間に、心が温かくなるようなケーキを作りたいんです」と答えた。

「そうか…」アキラはじっとリナを見つめ、「その気持ちがあれば、きっと良いケーキができると思うよ。レシピも大事だけど、心から誰かを思って作ることが、味に現れるんだ」と語りかけた。そして、特別なクリスマスケーキを考える上で、思い出を込めるのも大事なことだと教えてくれた。

リナは、ふと母が見せてくれたあの笑顔を思い出し、「そうですね…。母が病室でケーキを食べたときの、あの優しい笑顔をもう一度届けられるように作りたいです」と心からそう思えた。

アキラは微笑みながら、「それなら、今年はちょっと変わったレシピに挑戦してみないか？例えば、ベリーの酸味とチョコレートの甘さを組み合わせたケーキとか。甘いだけじゃなくて、深みのある味わいが出せる。お前の思い出と重なる部分があるかもしれないよ」と提案した。

リナはその言葉に目を輝かせ、心の中に新しいアイデアが芽生え始めた。酸味と甘み、そして温かさが混ざり合うケーキ…それはまさに、母の笑顔の記憶そのものだった。

「ありがとうございます、アキラさん！そのレシピ、やってみます！」

リナの心には、母の笑顔とともに、誰かに届けたい気持ちが少しずつ形になっていくのを感じたのだった。

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