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12月も半ばに差しかかったある冬の日、斎藤一郎は古びた家の戸棚を整理していた。還暦を迎え、定年を機に少しずつ物を減らして身軽になりたいと考えたのだ。奥の方から、ずいぶんと年季の入った木箱が出てきた。それは、一郎の母、光子が大切にしていた箱で、昔の写真や手紙がぎっしりと詰まっていた。 一郎は思わず手を止め、その箱の中を見つめた。箱の蓋を開けると、懐かしい香りが漂ってきた。昔、母が贈ってくれたお歳暮の贈り物の数々が甦る香りだ。何十年も前、彼が小学生だった頃から、母は毎年、親しい友人や親戚に丁寧にお歳暮を贈っていた。家の片隅で、光子が贈り物を一つひとつ手に取りながら包み、手紙を書いていた光景が瞼に浮かぶ。 幼い頃の一郎には、その意味がよく分からなかった。「どうしてそんなに毎年大変な思いをして贈り物をするの?」と、子供心に不思議だったのだ。しかし、母はいつも微笑みながら、「これはね、感謝を伝えるためなのよ」と静かに答えるだけだった。 その年も母は「山田さんに」「近藤さんにも忘れずに」と忙しそうに贈り物の準備を進めていた。幼心に理解できないながらも、一郎はその情景が温かく、心の奥に何か特別なものを残していた。そして今、その箱を開けてみて、当時の母の思いが少しだけ分かった気がした。 一郎は一つひとつの手紙に目を通しながら、母の感謝の気持ちが時を越えて伝わってくるような気がした。母が他界してから10年が経つが、その思いは今でもしっかりと残っていた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.11.14 03:33:14
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