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2024.11.14
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父へのお歳暮を贈って数日が経った頃、一郎はふと、母の大切にしていた木箱を思い出し、もう一度見返してみたくなった。箱を開けると、そこにはまた新しい気づきが待っていた。

箱の中には、昔母が手紙を出した際の相手から届いた返事や写真が何枚も入っていた。母は一人ひとりに心を込めて手紙を書き、そしてそれに対する感謝の気持ちがまた母に返ってきていたのだ。その手紙のやりとりから、母がどれほど周りの人々と深いつながりを築いていたかがうかがえた。

その中でも、一通の古い封筒が一郎の目に止まった。封筒には「岡田さんへ」と書かれていたが、封を開けると、そこには母が一郎に語っていなかった想いが綴られていた。それは、岡田という人が昔、生活に苦しんでいた母を助けてくれたことへの深い感謝が書かれた手紙だった。

「あなたがいなければ、私は一郎をこんなに育てることはできなかったかもしれません」

母の筆跡で書かれたその言葉を読み、一郎の心に衝撃が走った。彼は、母が周りの人々にどれほど支えられていたのかを改めて知った。そして、母がその感謝をずっと忘れずに、毎年のように心を込めて贈り物を続けていたことの理由もわかった気がした。

一郎は、その岡田さんが今どこにいるのかが気になった。手紙の文面からは、どうやらかなり年上の方のようで、もしかするともうこの世にはいないかもしれない。しかし、もし健在であれば、ぜひ母の代わりにお歳暮を贈り、感謝を伝えたいと思うようになった。

調べたところ、幸いにも岡田さんはまだ健在で、少し離れた町の老人ホームで暮らしていることがわかった。一郎はその知らせに胸を熱くし、早速岡田さんに会いに行く準備をした。母がかつて贈り続けた雪見饅頭を持って、感謝の気持ちと共に。

一郎が老人ホームに着くと、岡田さんは穏やかな表情で一郎を迎えてくれた。母の名を告げると、岡田さんは驚きながらも微笑んで、「光子さんの息子さんか、懐かしいねぇ」としみじみ語り出した。

一郎は、母が岡田さんに対して抱いていた感謝の思いを、自分なりに言葉にして伝えた。そして、母が贈っていた雪見饅頭を差し出すと、岡田さんは目を細めながら「懐かしいねぇ、光子さんは本当に優しい人だった」とぽつりとつぶやいた。

岡田さんの言葉と、母の深い感謝の心を改めて感じ、一郎は母の思いが自分を通じてこうしてつながっていくことに、静かな感動を覚えた。







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最終更新日  2024.11.14 03:48:30
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