KJESSのブログ

彩奈から贈られた和菓子を手に、母親の美代子は久しぶりに近所の友人たちを家に招待した。寒い冬の日、美代子の家のこたつの周りには、昔からの友人たちが集まり、湯気の立つ急須を囲んで談笑が始まった。

「彩奈ちゃん、こんな素敵な和菓子を送ってくれるなんて、優しい娘さんねえ。」

友人の一人、藤村靖子が笑顔で言うと、美代子は少し照れたように微笑んだ。

「忙しいのに、こうやって気にかけてくれるのが嬉しいのよ。東京で一人頑張っているんだから。」

美代子は、和菓子の詰め合わせをみんなに分けながら、娘の成長や日々の頑張りについて話した。友人たちは、互いの家族の話を交えながら、自分たちが年を重ねてもこうして支え合える幸せを改めて感じていた。

その中で、靖子はふと気になっていた近所の一人暮らしの老人、森田昭三のことを思い出した。

「そういえば、森田さん、最近あまり外に出てこないみたいだけど、大丈夫かしら？」

他の友人たちも心配そうな顔をした。昭三は80代後半になり、ここ数年は体調を崩しがちだった。独り暮らしのため、誰かが声をかけることが減ってしまい、地域の集まりにも顔を出さなくなっていたのだ。

美代子は、「それなら、この和菓子を少しおすそ分けして、森田さんの様子を見に行きましょう。」と提案した。友人たちは賛成し、すぐに和菓子を詰め直して昭三の家を訪れることにした。

昭三の家の玄関を訪れた美代子たちは、インターホンを押したあと、しばらく待った。やがてゆっくりとドアが開き、少し驚いた表情の昭三が顔を出した。

「おや、美代ちゃんたちか。こんな寒い日にどうしたんだい？」

「森田さん、久しぶりです。お元気にしてるかなと思って、ちょっと顔を見に来ました。」

美代子は柔らかな声でそう言いながら、和菓子の入った袋を差し出した。

「これ、私の娘が贈ってくれたものなんです。とても美味しいので、森田さんにもぜひ味わってほしくて。」

昭三は目を丸くしながら袋を受け取り、しばし言葉を失った。

「こんなふうに気にかけてもらえるなんて……ありがとう。本当にありがとう。」

昭三はしばらくぶりに人と温かく話をしたことに心がほぐれ、徐々に笑顔を取り戻していった。そして、「せっかくだから少し上がっていきなさい。」と美代子たちを家の中へ招き入れた。

居間で昭三と話すうちに、美代子たちは彼が最近感じていた孤独や不安について知ることができた。それでも、久しぶりに人と話すことで彼の表情は柔らかくなり、「またいつでも顔を見せてくれよ。」と笑顔で見送ってくれた。

帰り道、美代子たちは「やっぱりお歳暮や贈り物って、物そのものだけじゃなくて、気持ちを届ける手段なんだわね。」と話し合いながら帰路に着いた。そして、この地域で孤独を感じている人たちをもっと支えていく方法を考え始めた。

その後、美代子たちは近所の人々に声をかけ、月に一度のお茶会を開催することを決めた。そこではお歳暮のような贈り物を持ち寄り、互いの近況を話し合う場を作ったのだ。昭三もそのお茶会に参加するようになり、少しずつ笑顔が戻っていった。

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