そしてまた葉子、「この人じゃない。」
そしてまた葉子、「この人じゃない。」ポツリとそう言って葉子も初めてマイクにポインターを。「日比谷部長、ありがとうございました。また、振り出しに戻ったようです。」その声に周りの面々も…。「えっ…???」尚登、画面を見ながら…、けれどもマイクは閉じられたままで…、「どうして…???選さん…???」紫も都沢も同様に…。海江田は、「ん~~~。」会議室でも杏樹、顔を傾げて…。日比谷、葉子の声に微笑んで…、「えぇ。そのようで…。」そこで初めて次々とマイクにポインターを当てて…。尚登、「ど…、どうして…???…けど、どうやって…、日比谷部長、その情報…???」杏樹も、少し両眉の先端を吊り上げるように…。日比谷、ニッコリと杏樹を見て…。「実は…、今回のこのM&A…、私も個人的に、調べさせて頂いていたの。…まぁ…、詳しい事は、長谷部や陣屋にも聞いてはいたから…。そして…、昔の私の古巣からも、少々調べてもらって…。」杏樹、「古巣…???」そこに海江田の声、「元警視庁捜査二課の刑事。日比谷部長。」その声に杏樹、いきなり目を見開いて、「えっ!!!」それは川峯も同じ、口を尖らせて目を真ん丸に。日比谷、そんな海江田に、「おや。海江田さん、御存じで…。」「えぇ…。私は…、鳩崎部長から…、その事を…、かなり以前に…。」「ふふん。な~~るほどね~~。」そして今度は葉子、「そして…、今回のM&Aには、川峯取締役は何ら…関わってはいなと…。」杏樹、「えっ…???」日比谷は、「えぇ。そういう事になるわね。」けれども、「選さん…。でも…、どうして、そう思った…???」「実際。」葉子。「仮に…、川峯取締役が、経営手腕が良くても…。けれども一度多額の投資に失敗。そして苦い経験。それもどん底の…。」そこまで言って葉子、「失礼ですけど…。そういう人物を…、ましてやマンモス企業とも言われているホテルキャッスル・チャイナ。M&Aの仕掛け人に、選ぶとは、到底。それに…、宮越弁護士ですけど…。その名の通り、法曹界では名の通っている方。幾ら弁護士、そして投資家の顔を持っている方でも、そんな…、道を外れた事をするとは…。ギャンブル以前に、リスクが高過ぎる。」そんな葉子を黙って見ている美琴、そして尚登に海江田、紫に都沢。日比谷、そんな葉子の話を聞いて、笑顔で、「はは。その通り。凄いわね、選さん。今の私の話で、そこまで…。」杏樹、「元警視庁…、捜査二課の…、刑事…。」川峯は力が抜けたように、日比谷を見ていた。海江田、少し身体を起こしたように…、「ふり…だし…かぁ。」その頃、仕込みをしていた高村家の通。口笛を吹きながら…。ふと、「あ~~れ~~。」その声に愛生、「どうしたの…???」通、顔を傾げて、「ん~~~???…今さ。俺…。何か、思い出した…。」「何を…???」「確か…、あん時…。あの人の…隣にいた人物…。」そこまで言って通、何かしら納得したような顔で、「はいはいはいはい。女だわ。…確かに女性~~。うんうんうん。」その声に愛生、「はっ…???…女性…???…何の話…???」そんな愛生を見て通、「あ~~。うん。ほら。この前、姉御たちに言った弁護士の人。裏の顔が投資家だって。」「うん。」「ここに来て投資の話、しててさ。あん時、ふたり連れだったんだよ。物凄い真剣な顔して、その投資の話聞いてた人物。思い出したのさ。確かに、女。」愛生、その話に、「へぇ~~。」「ただ…。」顔を傾げて通、「残念ながら、名前がね~~。それだけは…、分かんない。顔は…、覚えてんだけどさ。」口を尖らせての愛生、そして、「ふ~~~ん~。」杏樹、川峯に、「今回は…、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。」川峯、困ったような顔をしては、「いいぇ…。」日比谷、「川峯さん。今回、あなたの承諾なしにあなたの過去を調べた事、お許しください。実際であれば、違法に成り兼ねない事ですが…、状況が状況下で。」そこまで言って日比谷、椅子から立ち上がり、川峯に一礼をして、「申し訳ございませんでした。」都沢、ポツリと、「凄ぇ。」海江田と葉子、そして紫は黙ったままで、僅かに頷いて。そんな姿勢の日比谷に川峯、自分も椅子から立ち上がり、「いいえ。…そんな…。…でも…、感服しました。…でも…。これだけは言えます。私、ホテルキャッスル・チャイナ。社長の名前は知ってますけど…。残念ながら、お会いした事は…、一度も…。」日比谷、「ありがとうございます。」杏樹もコクリと。川峯、「では…、失礼いたします。」 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※