一心同体








あなたにとって「心の友」って何ですか?

私はかつて「心の友」を持っていた。
彼女もまた私よりも早くこの世を去った。
それは、2002、12、23。

「私よりも先に逝ってしまう」
その事は彼女に出会った最初の日から解っていても
やはりその日を迎えるのは辛かった。

私からまた一つ、時代の終止符を迎えた様な、そんな気がした。

彼女はゴールデンレトリバーという「犬」として、
私の所に来て私を支える為にこの世に生を受けた。

小さい時は、よくお風呂で水浴びをさせた。
お風呂にお湯をはってポチャンと入れるとその中で自由に泳ぐ。
 
身体がどんどん大きくなる。そのうち二人でお風呂も入れなくなる。
でもまだ自分は子供のつもり。
懸命に湯船に入ろうとする。
そしてお湯があふれる。

やがて大人の女性に成長し、私の良きパートナーとして
いつも、どこに行くにも連れて歩いた。
それは彼女が亡くなるその時までずっと続いた。

思い返すと本当に色々な事があった。
私の人生の一番多感な時期を二人で過ごして来た。
私が生まれて初めて自分一人でマナーを教え、
時には叱り、時には褒め、時には友に喜び、
全てを分かち合った存在。
そしてお互いを完全に理解し合っていた。


彼女は、私が落ち込んでいる時、黙って寄り添ってくれた。
彼女は、私が苦しんでいる時、黙って私を見つめていてくれた。
彼女は、私が泣いている時、一緒に泣いてくれた。
彼女は、私が塞ぎ込んでいる時、励ましてくれた。
彼女は、私が寂しい時、そっと暖めてくれた。
彼女は、私が忙しい時、助けてくれた。

彼女は、私がフィアンセを失った時も私の傍にいた。
そして彼の遺体から片時も離れようとしなかった。
私は彼女によって生かされていた。
彼女が頑張ったから私も頑張れた。

彼女は、私がシングルマザーの道を決めたときも傍にいた。
娘の鳴き声を聞くと、おむつのにおいをかいで私に知らせに来た。
またある時は、ミルクのボトルをくわえて私に渡しに来た。
またある時は黙って娘の横で添い寝をしていた。

そんな彼女も「癌」という病魔には勝てなかった。








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