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Sky in Australia

Sky in Australia

危険な状態

子宮口が開きかけているということで、緊急入院になったその日、いきなり張り止めの点滴に24時間つながれることになりました。その副作用というのが、これまたすごいのです。

まるでマラソンを走り終えたかのようなものすごい動悸。頭もボーっとなります。最初あまりのしんどざに無理やり点滴スタンドを引きずりながら一階下にあるナースセンターまで下りていきました。ところがそこまで辿り着けないかと思ったほどしんどかったのです。

ナースセンターにやっとのことで辿り着き、”気分が悪いんですけど、、、。”と言うのがやっと。恥ずかしいけど目は涙で溢れていました。看護婦さんたちが、

”どうしてナースコールしなかったんですか!安静にしておかないといけないんですよ!”

と血相を変えて車椅子を急いで持ってきました。結局その日は薬の副作用のためあまりの苦しさに朝まで眠れず、ナースセンター横の陣痛質で氷枕に突っ伏して(横になると余計に動悸が激しくなるのです)過ごしました。これからどうなるのだろう、こんな苦しみに出産まで耐えることなんて出来ない、そう思いました。

先生が様子を見に来てくれた時、やっと搾り出す声で訴えました。

”この点滴、外すことはできないんですか。しんどくてしょうがないんですけど、、、。”

答えは残酷にもNO。赤ちゃんが今出てきてもおかしくない危険な状態なので、点滴も入院も出産までずっとになるでしょうとのこと。私は本気で注射針を腕から引っこ抜き、病院から脱走してやりたいと思いました。

私が何かを取ろうとちょっと手を伸ばしても、看護婦さんが引きつった顔で”自分で色々しようと思わないで何でも頼んでください!”と叫びます。”どんなに大変な状態かわかっていないんです。”と言われました。医者はプロですからうろたえた姿は見せません。でも生んだ後に、”あの時は本当に危ない状態でしたね。”と言われました。

結局それから半月間子宮口を結ぶ手術が終わるまで、尿管と点滴に24時間つながれた”絶対安静”状態になりました。上体を起こすことも最小限に抑えなければならないなので、お味噌汁もストローで飲まなければなりませんでした。この時赤ちゃんの想定体重はまだ一キロちょっと。今出てきたら障害を持ってしまう確率もまだまだ大きい時です。

不安で、入院してから2,3日は涙をこらえるのがやっとでした。夫リチャードは遠いオーストラリアの地にいるのです。でも涙が出そうになると、母親がストレスを感じると赤ちゃんに影響するのだ、私が守ってやらなければ誰がこの子を守ってやれるんだ、と必死でポジティブに考えようとしました。電話では、

”危ない状態だと言われたけど今は病院で最善のサポートを受けているから大丈夫。仕事があるんだから今日本に来るなんて言わないで。”

と焦るリチャードを止めた私。でも心の中は不安で一杯でした。夜夢で”surprise!!"とカーテンの陰からリチャードが現れました。起きてみて夢だったのでとてもがっかりした覚えがあります。でもすぐにリチャードから大きなピンクのフラワーアレンジメントが届きました。私の好きなピンクの花がアレンジされていました。大きいのでベッドの横に置くことが出来ず、窓際に飾ってもらいました。

看護婦さんが入ってくるたび、まあ、素敵なお花、これは誰の?と聞かれました。そこに書いてある英語のメッセージを訳して、ともよく言われました。

”世界で一番素晴らしい女性、もっとも献身的な母親、君を心の底から愛している。”

と書かれてありました。毎日ベッドに横たわってその花を眺めるとき、そこにリチャードがいるように思えました。お腹の中の子供を無事に生んで、リチャードに見せなければ、、、。それから出産まで約3ヶ月間この病院で暮らすことになりますが、毎日痛みと苦しみの連続で、何度カレンダーと時計を見たことか。

何度時計を見ても、さっきからたったの一時間しかたっていない。何度カレンダーを見ても、昨日からたった一日しかたっていない、一日が一週間にも感じるほどでした。

さらに辛かったのはトイレ。最初の半月はもちろん大もベッドの上でしなければいけませんでした。それも上体はほどんど起こさないで、です。大部屋で他の患者さんの面会に来ている人も沢山いるのに、そんなの無理ですよね。

妊娠中はみんなよく便秘になりますが、こういう状況も伴って人生最高記録!(失礼)何と一週間も出ませんでした。普段便秘とは縁のない私なので、便秘というものがどんなに辛いものなのか、この時やっとわかりました。ただでさえお腹の張りが頻繁にあるのに、便秘のせいでお腹はぱんぱん、夜も眠れませんでした。





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