ロンドンの街角で何を叫ぶ?前日に、ウエッジウッドの「フロレンティーン・ターコイズ」を手に入れることを決意した私達夫婦は、ハロッズのバーゲン当日の戦略を立てた。泊まっているホテルからハロッズまでは、地下鉄を乗り継ぎ少し距離があった。 ハロッズの食器売り場までは、少し複雑な店内を階段で移動しなければならない。 売り場までの経路は前日にリサーチし済みだった。 そこで、8ヶ月の長女を連れて、ベビーカーで移動するのは厳しいと判断し、夫1人で、開店時間を目がけて買いに行くことにした。 あらかじめ断っておきたいのだが、昨日までの日記を読んでいる人は、 「私が夫に命じて、あの高級ブランドの洋食器を買いに行かせた。」 と思っていると思うだろう。 確かに,我が家の力関係は,私にあるという事は, もはや否定出来ないような気がしている。 しかし、食器を買えと命じてはいない。 それだけは,違うとはっきりと断言できる。 私は、たとえこのミエヤス家においての力関係が、 皆様方の想像どおりだったとしても、 あの頃の私はそれほどへの物質的なものへの執着心はなかったと思っている。 憧れや、ステキだなあとは思っていたし、あったらいいなあと思ってはいたが,そこまでして手に入れようとは思ってはいなかった。 あくまでも、今回のお買い物は夫の意思で行ったと思う。 わざわざわたしのために骨を折るような人ではないということは、 この後のある出来事でもわかると思う。 夫がショッピングを楽しんでいる間、私はバッキンガム宮殿近くの公園で。長女と散歩を楽しんでいた。 夫が、無事狙っていた食器を手に入れて、私達と合流すると、 次なる目的地へと向かった。 そこは、日本の本が手に入る本屋さんだった。 私はとにかく読書が好きだ。 ベルリンでは日本の本が手に入らないため、 ぜひ行きたいと思っていた場所だった。 何ヶ月かぶりに、日本語で書いてある本を見たとき。 私はすっかり嬉しくなり、片っ端から気になる本を探した。 これから先約2年半過すヨーロッパでの生活を楽しむために、 私は何冊かの旅行関連の本やその他気に入った本を買うことにして、 夫に一応これだけの本を買いたいと確認の上レジで精算をした。 クレジットカードで精算をして、私は青くなった。 日本円に換算して、なんと軽く10万円を越えていたのであった。 イギリスのお金は1フラン160円ほどだった。 50フランでも約8000円。 どうも、単位が小さいと値段の感覚がなくなっていたらしい。 夫に告げたら、夫の顔色も変わった。 そしてクレジットカードで買ったので、返金は出来ないと言われた。 店を出て夫は言った。 「何で、そんなに買うんだ!」 「アンタに聞いたじゃない!アンタだっていいって言ったでしょ!」 後は何を言ったか覚えていないが、日本人がまわりにいない事や、 ロンドンのにぎやかで交通量の激しい雑音にかき消される声をいいことに、 私達は元気良く,思い切りケンカをした。 私達の間に、長女をはさんで・・・・ いま、もしタイムマシーンがあったら、 あの本屋の前の交差点へ行って言いたい。 一つ言い忘れたことがある。 「この、ケチ野郎!」 夫だって買ってきた食器のお値段は・・・・ 軽く10万円は越えていたじゃないか! しかし,今,タイムマシーンがなくて良かったと思う。 もし,あったら私達夫婦は今頃離婚していたに違いない。 そうしたら,長女から私は父親を奪っていた事にもなっただろうし, 長男(5歳)の存在だってなかったのだ。 子ども達が,今私に言う言葉がある。 夫とささいな事でケンカをして, 「バカヤスめ!」と私が後でつぶやいていると・・・ 「おかあさん,でもお父さんと結婚していて良かったでしょ? だって私達が生まれたのだから。」 「ソウダヨ,おとうさんは一生懸命頑張っているからいいんだよ」 娘と,息子に言われるのだ。 そう言われたら,こう答えるしかない。 「そうだね・・・・その通り!」 もし,タイムマシーンがあったら・・・・ あの時のロンドンの本屋の前の交差点に戻って・・・ 「私バカよね~♪おばかさんよね~♪」 ロンドンの中心で,細川たかしの歌を歌うのだ! みんな見てくれ~~~え! 夫が買ってくれたこの戦勝品の数々を! この後も,ミエヤス家の戦は続いた・・・・・ |