2020/06/21(日)21:49
赤染衛門の古墳 甲州韮崎 宮川舎漫筆(宮川政運)
赤染衛門の古墳 甲州韮崎 宮川舎漫筆(宮川政運) 爰に奥田某といえる者、 天明年中(1781~1789)甲州に勤ごとありし折、 甲州韮崎、さて寺の名も忘れたり。 右脇堂の所に苔むしたる古墳あり。 其頃中門建立の節、 右の古墳を取拂わんとせし前夜、 住僧の夢に、夫人来り、 此塚を取こぼつ事を歎き、 一ひらの短冊を置と夢見しが、 目覚めて見れば、 古きたんざき枕のもとに残れり。 取り上げて見れば、 なき跡のしるしとなれば其儘に とはれずとても有てしもかな 右ゆへ古墳は其儘にて中門をば塚の脇の方に寄せて建しといふ。 右の短冊奥田方へ持参りしかば、 奥田より古筆に出さし處、赤染衛門の筆よし。 珍しき事共なり。 この一條は奥田の一家のもの、 予がむつみし長崎氏の物語なり。