カテゴリ:松尾芭蕉資料室
芭蕉句選年考 年々や猿に着せたる猿の面 元禄六年の歳旦集にこの句あり、と糸切歯に見えたり ○ 許六が自得発明辨を考ふるに、是又元禄六年と見えたり ○ 古分抄に、支考曰く、此句は五文字に迎年の意は籠りながら、掟てたる歳旦の詞無ければ、是をも 雑の體とや云はん、或は無季の格とやいはん ○ 去来抄に曰く、一歳先師歳旦に「年々や猿に着せたる猿の面」と侍るを季如何侍るべき、と伺ひけ るに、年々はいかに、と宜ふいしくも承るもの哉、と退きぬ ○ 風俗文選に、許六直指導に、師曰く、すべて世の人句のたしかを好む、上手は危き所に居れり、さ れば上手の上には必仕損じ多し、愚老が常歳旦、年々や猿に着せたる猿の面、全く仕損じの句なり と。我問ふ、師の上にも仕損じ有りや、答へて曰く句毎に有。仕損じたらん何の苦みかあらん。 ○ 類柑子に元日やとあり。其角が詞書に、意の馬心の猿共に騒がしき事なりとあり ○ 古語に、心猿飛移五欲枝。意馬荒迷六塵境 ○ 説叢大全に、黒露が秘伝にありとあれども、其角が注にて事済むべきか ○ 句解に曰く、芭蕉は正保元中年に生る、依て此吟ありと、此論理窟にして取り難し、とあり ○ 按ずるに、如何にも理窟にして取り難からん、然れども元禄五年中の年なり、其翌年の歳旦なれば、 生れたるも翔の年、去年も申なり。依て此論あるか、爰に心の附き侍るは延宝談林の緑餘ならん ○ 翁草集に、鶏旦と題有り ○ 三艸紙に、此句歳旦、師曰く、人同じ所に留りで、同じ所に年々陥る事を悔いて云捨てたるとなり ○ 説叢大全に、翁の十二月の書翰に、歳暮の句と書交ぜある故に、祗徳が方にては、歳暮この句と定 まる由、書翰の末には、季の跨ぎたる句も多く有るものなり、歳旦の吟早く成りし故、歳暮の句と 書交ぜられしも知るべからす。近年僞筆多し、信用難し。歳旦の句なる事必定なり ○ 句解に、六窓一獼の心なりと ○ 又或人曰く、此事去来抄に有りと、されど予が方の去来抄には見えず。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年06月28日 20時12分46秒
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