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2020年06月28日
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カテゴリ:松尾芭蕉資料室

芭蕉句選年考 年々や猿に着せたる猿の面

元禄六年の歳旦集にこの句あり、と糸切歯に見えたり

○ 許六が自得発明辨を考ふるに、是又元禄六年と見えたり

○ 古分抄に、支考曰く、此句は五文字に迎年の意は籠りながら、掟てたる歳旦の詞無ければ、是をも 

雑の體とや云はん、或は無季の格とやいはん

       去来抄に曰く、一歳先師歳旦に「年々や猿に着せたる猿の面」と侍るを季如何侍るべき、と伺ひけ

るに、年々はいかに、と宜ふいしくも承るもの哉、と退きぬ

       風俗文選に、許六直指導に、師曰く、すべて世の人句のたしかを好む、上手は危き所に居れり、さ

れば上手の上には必仕損じ多し、愚老が常歳旦、年々や猿に着せたる猿の面、全く仕損じの句なり

と。我問ふ、師の上にも仕損じ有りや、答へて曰く句毎に有。仕損じたらん何の苦みかあらん。

○ 類柑子に元日やとあり。其角が詞書に、意の馬心の猿共に騒がしき事なりとあり

○ 古語に、心猿飛移五欲枝。意馬荒迷六塵境

○ 説叢大全に、黒露が秘伝にありとあれども、其角が注にて事済むべきか

○ 句解に曰く、芭蕉は正保元中年に生る、依て此吟ありと、此論理窟にして取り難し、とあり

○ 按ずるに、如何にも理窟にして取り難からん、然れども元禄五年中の年なり、其翌年の歳旦なれば、

生れたるも翔の年、去年も申なり。依て此論あるか、爰に心の附き侍るは延宝談林の緑餘ならん

○ 翁草集に、鶏旦と題有り

○ 三艸紙に、此句歳旦、師曰く、人同じ所に留りで、同じ所に年々陥る事を悔いて云捨てたるとなり 

○ 説叢大全に、翁の十二月の書翰に、歳暮の句と書交ぜある故に、祗徳が方にては、歳暮この句と定

まる由、書翰の末には、季の跨ぎたる句も多く有るものなり、歳旦の吟早く成りし故、歳暮の句と

書交ぜられしも知るべからす。近年僞筆多し、信用難し。歳旦の句なる事必定なり

       句解に、六窓一獼の心なりと 

       又或人曰く、此事去来抄に有りと、されど予が方の去来抄には見えず。






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最終更新日  2020年06月28日 20時12分46秒
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