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2020年08月26日
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カテゴリ:山口素堂資料室

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

享保2年 丁酉 1717

 

素堂、『通天橋』素堂一周忌追善集。黒露編。(別掲)素堂の生涯を探る上で重要な記述が見える。

 

 

通天橋俳諧集序

かつしかの素堂翁は、やまともろこしの歌を常にし、こと更俳の狂句の達人なり。おしひかな、享保初のとし八月中の五日、終の古人の跡を追ぬ、予もまた志を通ること年久し。しかあれば猶子雁山(山口黒露)をのく追悼の言葉を桜に集んとて予に一序を乞。おもふに彼翁、周茂敍が流に習ふて、一生池に芙蓉を友とせしは、此きはの便りにもやと、筆を染るものならし。

月清く蓮の実飛で西の空            露沾

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)追悼

狙公をうしなふて朝三暮四のやしなひだにあたはず。

猿引きはなれてさるの夜寒かな      雁山

長板拭はこゝに一輪                琴風

秋の田の悦ぶ風は細くして          百里

おのれあぶなく篭作る顔             山

鎗持の立かけて待磯づたひ           風

はぢかぬほどは酢のかひもなし       里

こゝは石露は植込メ蝉の声           山

踏で通るしらぬも裁もの             風

のみ喰て忽加茂の祈祷料             里 (三十六韻、以下略)

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

素堂翁は近きあたりに軒を隔て、月雪花鳥の頃は互いに心動かし、句をつゞりけるに、時こそあれ、仲秋中の五日に世を去て筆の跡を残す。

枕ひとつ今宵の月に友もなし        衰杖(杉風)

八徳やそのおもかげも秋の霜        蒼波

愛蓮のあるじ尋よくはゐ掘          専吟

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

そのむかしの句を

目には青葉うつり行世の野分哉      青雲(甲斐の人)

世の鳴し音はおとにて一葉かな      雪凍

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

山口素堂子さりし八月良夜、また月に思ふ。

宗鑑が下の客いかに宿の月

といひしは三十年朞年にとなふ。

下のに折まて世界柴の露            沾徳

けふを名の人にかつしかの月        山友

朝□も菩提も昼に夢の内            堤亭

おもへ今其人としも柿の禅          青峩

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

懶残が閑をもって

参禅の芋に今宵の人の事            如蒿

何ともなく茶は醒にけり岑の月      東周

直された舞の手もあり月の跡        玉尋

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

惜るゝものほどそれよ芙蓉あり      泰竜

古本の畳に越やしのぶ艸            百里

此別れ蓑虫よりも鳴音哉            琴風

人の秋にはなし雀や無門関          和風

かいやりし花野の文もすがた哉      序令

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

深川の旧庵をおもへば、あるじはなし。文のたくみは人口にありて、おもひ出すに

蓑むし蓑むし錠に錆うき水の月      祇空

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

素翁の夢は何夢ぞ。常なあぬ山風にて、武さし野の昔を聞く、其夜は葉月中の五日

風月の夢人ふせり花すゝき        京 言水

 

きのふと過けふはあるじなきをくやみて

十六夜や誰がゆるして四畳半        杞柳

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

尋思

来れるは何ごとぞや。なにかつかしの素堂、しかじかの夜復命すとや。我此人をしらず。それ唯知らずかし。まことに蓮を愛して周子に次ぎ、名を埋て炉下に帰ス。されば其情を同じうして其世を同じうせざることをうらむ。愁て今さらに其ことをしらんとすれば、炭きえて灰となり、灰曾良しうして一炉寒く、残るものとては唐茶に酔し心のみなりけらし。猶その趣を携て一句を積とは、我をしてなかしむるか。汝におなじきものは何ぞや。葉は眠るに似てうつぶき、花は語るに似て笑。誰か是に向ひて、昨日をしたひけふを啼ざらめやは。花散葉折て悲風謡ひ芦花舞ふて池水秋なり。かれはその秋の冥々たるに入、我は偶然と口明き偶然と手を打て後はあゝこゝに呈す。同じくはうけよ。

秋にして舞ふて入けり風の笠        謝道

秋の色の素にかへりたる別れかな  諾自

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

追悼

素堂翁は、世にありて世をはなれ、富貴は水中の泡と貧泉をくるしまず、前の大河後の小流を常に吟行し、武江の東葛飾に住居し、一窓に安閑をたのしみ、花の日は立出てとかなで、雪の朝には炉中に炭などものして、泌音にしたしき友を待、さて月のゆふべは即興の章おもしろく、拙からずも筆をしめて、まことに其名都辺までも著し。折こそあれ、享保はじめのとし名月の其夜果られしこと、哀も殊勝になつかしくおもひ侍りて、

名月に乾く日ごろの硯かな          昌貢

子生る中にわかるいろく            専吟

鹿聞の同宿するは誰ならむ          岩翁

帰る手代の今岑を越                巴人

折櫃をせっかく留て藁が出る        琴風

皷の火鉢先はとりまく              執筆 (三十六韻、以下略)

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

実は飛て台に成し蓮かな            桃隣

一とせ不忍の池の端に住居して

はずかしの蓮に見られて居る心      素堂

この句は人口にとゞまり候。此の度の一集に御加入可被候。

桃隣

雁山さま

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

薬掘時あるものを忌日とは          雨橘

蓮の実の抜方清し世よき人          略洗

秀たる蘭も名のみのむかし哉        蝉話

其癖の匂ひぞ忍ぶ                  維

なき残すものよ書棚の筆の虫        斧

ばせをとはたしかに鄰筆噂          貞佐

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

老やすからんことをおもふ、終りめでたからむことを思ふ。時なる哉。名月の夜に世を眠れるは素堂のぬしやく。

古人かなその名も聞き望の月        立志

一枝の宿をみぞさゝひ飛            雁山

(略)

目たつ也並木の折るゝ秋の声        立鴨        (五十韻、以下略)

 

《註》…連衆…立志・雁山・玉全・里東・柏抱・立丈・正興・兎睡・巴江・南仙・百二・谷推・晴星・石魚・全角・素白

川揚・柑市・答推・正与・免睡

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

素先生、むかしそれの月の初三より月をみそめられしに、ことし終りをとり給ふこと三五の夕なること、誠に風雅の人のなみだならむ。

一生も月の噂や六間堀              銀葉

絃絶や凡の人の月の前              十尺

其日哉手にも取れず艸の露          雨玉

又飛ぬ蓮に兼て鳴れたり            潭北

隣なるばせをはやぶれその人も      岷江

実の跡も蓮なる哉はちす哉           史

すき者の名こそ流て月の音          浪花

蓮の葉の水に朽たる茶しみ哉        十口

有明やなきに指折る鐘の数          円推

道経も発句もまねく尾花哉          故一

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

去ものは勿論うとし、すべて世のことみなきのふはけふの昔、先刻もまた過去なり。

此人世をさり給へばさらに十六日の心せり。

声かれて夜は明にけり月きのふ      一漁

秋の胡蝶の枕つめたき              雁山

もぐ時は雨の類ひのむかごにて      素丸

奉行は川の探りなりけり            常仙

客に来て隅ぐ除る漆下戸           斗七

琵琶の鞠形覗くよは腰              金波

蒼求をとよらの梢吹おろし                  局雅

手づから野菜山のふところ          北史

日食へあさまにはたく櫛道具        只員

土一升に帽子おもたき              漁阿

恥しの絵にもならずも揉んで捨      李仲 (三十六韻、以下略)

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

追悼

物澄り万里雲尽てそれも影                  常仙

散ころも音はありけり玉柳                  北史

声澄や月の夜ごろの南華集                  局雅

新涼は舌に知らせり後むかし        只員

讃さしの隔になるや藪鴨脚                  漁阿

捨石に誰衣うつ艸の底              李仲

此菴も野分の跡や喰違ひ            金波

そのことの薄なつかし古手帋        斗七

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

蓑むしやおもひしほどの板間より

《註》…素堂の句、下五は「庇より」と侍りしは、ばせを菴の閑を訪ひてと聞侍りき。

みの虫のいつ出たことぞうす衣      台夫

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

一とせ芭蕉・素堂・安適・小豆講といふを催、つねにより合れたるよし、原氏のも

のがたりを聞て、

惜るゝ泪の露や小豆撰              里丈

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

山口素翁みまかりて有し世の春宵秋露なるおもかげを思ひ侘て手向草となしぬ。

舞あふぎはかなく残る月夜影        乗牛

酒の香に菊の凋れる時もこそ        古洲

百ケ日 霜月廿三日

それぞとも誰か冬瓜の霜の上        雁山

人々の歎にはや一周忌に成りて

両袖の月も曇るや二年越            介我

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

素堂丈人と杖を同うし、塩瀬の閑居に交わること、きのふにして去年水無月也。けふ一周忌のよし雁山よりきこゆ。思ふに昔、庭の蓮見、十月の年忘、雪の茶事、かれわすれがたく、其席につらなりたる人も多は古人と成りて、かの蓮や台とならん、隠士一 香の序に一連に拝するものなり。

二千里の他人も月の手向哉          沾洲

親玉の終めぐりけり秋の雨          盤星

去年のまたうら吹かへす蔓離れ      東冬

とし月の道に蘭なし秋茄子          織月

碑の筆をいまだに        や蘭の花  南仙

月草よおゆび折そめ一周り          玉厚

嚶其鳴猶求友声  矧伊人哉巳       及一周

ものは不知かたり伝る三五の夜      蘭洲

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

李白がおもかげをとどめしは、あり明のほのかなるなり。此人を夢とせば名月満

屋梁といはん。

影有て夜をも残ぬ月見かな          来尓

蕣の蔓ばかりなる昔反古            加裔

 

『通天橋』雁山編(『甲府市誌』「資料編」巻四近世3)

水無月のころ素翁の墓なりといふ夢をみる。かの李札が本意もなくてさめ侍りき。

つかのまの塚にもかけよ唐扇        鶴里

一とせの髪はえにけり石の蔦        同

 

隠家のてうどあるにまかせて用ひよと常にもてあそばれしが、其数々を題して人

々より給りけるをここに






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最終更新日  2020年08月26日 17時07分30秒
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