回帰線Tropic of Graduation前作よりも具体的なシチュエーションが用いられた表現がなされている。 中にはロックシンガーの領域をはるかに超えた啓示的な言葉で語られたナンバーもあり、そうした事が後年まで 彼の名前に付される形容詞にもつながっていったのかもしれない。 しかし、そんな行く道を示すようなフレーズを繰り返す曲があるかと思えば、自らの歩いてきた道や生きている今の 場所にも迷っているような曲もあり、それらが混在一体となって新しい世界観を生んでいる。 尾崎豊の描く世界はこの作品で確立されたと言っていいだろう。 曲によって歌唱法にもさまざまなバリエーションがみられ、ボーカリストとしての成長を感じさせる1枚でもある。 また、浜田省吾にも通じるようなストーリーテラーの才能の片鱗ものぞかせている。 回帰線[TROPIC OF GRADUATION] 1. Scrambring Rock'n' Roll 2.Bow! 3.Scrap Alley 4.ダンスホール[Dance Hall] 5.卒業[Graduation] 6.存在[Existence] 7.坂の下に見えたあの街に[Downslope] 8.群集の中の猫[Cat In The Crowd] 9.Teenage Blue 10.シェリー[Shelly] ☆「Scrambling Rock'n Roll」ライブでは絶対欠かせないナンバー。 自由になりたくないかぁいっ♪→熱くなりたくはないかあぁ~いっ♪という尾崎とファンとの掛け合いが定番になっていた。 ☆「Bow!」世のリーマン連中に叩き付けた強烈な曲。 ちなみにこのホムペのトップメッセージ「鉄を喰え 飢えた狼よ・・・」はこの曲の歌詞から拝借している。 ☆「Scrap Alley」19で子供が出来、家庭を持った友を祝福する曲。 同時に大人への脱皮と社会への旅立ちの賛歌でもある。 ☆「ダンスホール」オーディションに送ったデモテープに既に収められていた曲で実際のオーディション本番でも歌っている。 あまりに大人びた歌詞にプロデューサーから何度も「ホントは誰が作ったんだ?」と聞かれた。 ☆「卒業」尾崎の名を世に広く知らしめた最初のヒットシングル。 オレ個人はあまり好きな曲ではないが、この曲をピアノの弾き語りで歌うライブの尾崎は好きだった。 ☆「存在」最初にこの曲を聴いた時には「なんだか(歌詞が)哲学的でいまいちノレねえなぁ。」なんて思ってあまり好きではなかった。 ところが、5年、10年聴き続けて今では好きな曲の中に入っている。 それどころか、ふと気がつくと口ずさんでいるのがこの曲だったりもする。 オレにとって、なんとも不思議な力を持った楽曲だ。 ☆「坂の下に見えたあの街に」家族に別れを告げ、夢を追って家を飛び出して行く若者の姿は、社会への旅立ちとも重なる。 以前尾崎の活動休止期間中に一度だけ実家を訪ねた事があるが、この曲に出てくるような坂など実際にはどこにも無くて 少しガッカリしたのを覚えている。 ☆「群衆の中の猫」この曲を良く聴いていた頃は、ここに描かれているような優しさと寂しさを分かち合って、 冷たい雨の降る中を寄り添って歩くような、繊細な関係を育める女性との出会いをひたすら期待していたものだが、 いやいやまったく叶わなかったなぁ。 ☆「Teenage Blue」まるでブルースシンガーのような歌唱法で聴かせる珍しい一曲。ライブではさらにその色が濃く出ていた。 そのバージョンは、コンピレーションライブアルバム「MISSIG BOY」で聴く事ができる。 ☆「シェリー」女性の名前を冠した楽曲はクラプトンやサザンの超有名曲の例を挙げるまでもなくたくさんある。 しかしその中でも、この曲の存在は異質だろう。 傷つき転がる自分を支えて欲しいと願いながら、今歩く道の是非を何度も問いかけるこの曲は異形のラブソングだ。 ちなみに既にお気づきかもしれないが、このブログのタイトルはこの曲の歌詞の一節からきている。
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