絨毯屋へようこそ  トルコの絨毯屋のお仕事記

2006/08/13(日)17:23

イスタンブルおのぼりさん紀行

出張表話&裏話(58)

いやいや先日、日本へ休暇にでかけるアドナンと息子を見送りにイスタンブルまで行ってきた。 ついでに郊外やアジアサイドの絨毯関係や絨毯無関係の知り合いをまわり、最後にスルタンアフメットに住む日本人女性を訪ねる目的もあって、久しぶりにブルーモスク、アヤソフィア、トプカプ宮殿、地下宮殿と行った歴史的建造物が残る観光の中心地スルタンアフメット地区のホテルに滞在することになった。 商売上の話なのでほとんど書くことはなかったけど、イスタンブルへは2~6か月に1度は用事(絨毯関係でない貿易会社としての仕事)で出かける。今年に入って頻繁で、アンタルヤーイスタンブルの飛行機の中じゃ顔見知りのスチュワーデスさんも増えて、いまじゃごく普通にトルコ語でしか話しかけてもらえない・・・・。 さてイスタンブルへ行っても、よほどのことがない限り、過去10年、スルタンアフメット地区には泊まったことがない。 観光目的ではないし、ホテルは他の地区の同程度のものに比べて高いし、それになんといっても「ハヌッチュ」と呼ばれる絨毯屋の客引きとのやりとりが面倒である。 客引きってものが禁止されて、一時期それほどでもなかったりしたようだし、知っている人は知っているから、私に声をかけてくることもほとんどなかったのだけど、今回、久しぶりにスルタンアフメット界隈をぶらぶら歩いたらかなり大変だった。 相手にも無駄な時間を過ごさせないように、すぐにトルコ語で返答するし、私相手じゃ商売にならないよ、と言うのだけど、「ユズスズ(図々しい)」の彼らにとっても彼らなりのプライドはあるから、はいそうですか、と戻るわけにはいかないらしく、少なくとも何分かは時間を潰されることになる。 普段は、周囲を気にしないし、見ない。 誰か知り合いが通っても全く気がつかないミフリ社長であるが、あの界隈を歩いていて、あまりにも客引きに声をかけられたものだから、周囲に少し敏感になってきた。 どこかでお茶をしているときなど、彼らの行動が目に止まることもあった。 客引きはだいたいいくつかのポイントで観光客が通るのを待っている。 目はキョロキョロと止まることなく、観察を続ける。 目星をつけたら後ろからついてきて、タイミングを見計らったところで、いったん通りすぎて戻ってくる。 そして英語、もしくは日本語で 「すみません、ちょっと聞きたいことがあるのだけど・・・」とか 「日本人ですか・・・」とか 「どこか探しているの」とか 「あれがブルーモスクで、今なら見学できるけど、行った?」とか・・・・。 とにかく話をするきっかけを作ろうとする。 高度になると、本当は狙いをつけて追ってきたにも関わらず、ものすごくさりげない。 とくに日本語ペラペラで、経験から日本人気質までつかんでいる人たちは見事である。 携帯電話を使用した連携プレーもある。 最終的に目的地である絨毯屋に連れていけば任務完了であるから、きっかけやそれまでの過程はそれぞれの工夫がある。 具体的に書いてしまうと、商売の邪魔をしていると思われてしまうから、書かないことにする。 でも客引きという職業的にはあまり良い印象はないけど、プロ根性というか意識、そしてテクニックもここまでくると立派だと思ったりもする。 嫌がられることが多いのであろうが、個人的に思うのは、職業としての行動であるからその人自身まで嫌っては気の毒である。 彼らだってお金を稼がなければならないから、必死なのである。 それに声をかけられたときに、「ところで○○に行きたいのだけど、どこか知っている?」なんて尋ねると、それはそれは丁寧に案内までしてくれる人も少なくない。 こちらが普通に反応している分には嫌な態度や言葉を吐き捨てられることもないし、客にならないと思ったら、その後は無視してくれる。 客引きをやっている、もしくはやっていた知り合いが何人かいる。 彼らは「ユズスズ」であるが、個人的に話をする分には気のいい若者たちである。 商売柄、外国人のガールフレンドはたくさんいるのだが、心の中では 「本当は誰かとちゃんと恋愛をしてみたい」とか 「時期が来たら普通の仕事をしたい」とか 「声をかけて、こんなことを言われて、傷ついている」とか 「どうしたらこの生活から抜けられるのだろう」とか 密かに思っていたりもする。 簡単に日替わりの外国人のガールフレンドができるし、そのために嘘をつくこともいとわないけど、若気のいたりというか、たいていある年齢に達すると落ち着いてきて、そういう生活もバカバカしくなってくるものだと思う。 ところで話を元に戻すと、彼らの特徴であるが、なわばり意識が強い。 どこからどこまでは俺のなわばりで、この客は俺の客で・・・・という感じ。 そのため、他の客引きが連れ歩いていた客には手を出さない・・・・。 だからね、逆にいうと客引きが面倒だなあ、と思ったら、誰か特定の人と主なポイントを1時間ほどグルグル歩けばいいのである。あとは自動的に情報が伝わる。 その後、見事に他の客引きグループからは声をかけられなくなるものである。 なんにせよ、見ず知らずの人に声をかけてくる以上、彼らには何かの目的があるわけだから、用がないのであれば無視するしかない。彼らも無視されるのもわかっているから、気を引くためにわざと怒らせるようなことを言ってみたりもするけど、反応したら思うつぼ。 わざわざこちらから嫌な態度や言葉をなげかける必要もないし、なかには稀であろうが、客引きじゃなくて純粋に日本人に興味があって声をかけてくる一般の人もいるはずである。 お互い嫌な思いをしない、させない、それにこしたことはないのだと・・・・は思うのだけど・・・・それも難しいな、などと思ったり・・・・。 アンタルヤでぼおっと商売していると、この手の話とは無縁であるが、スルタンアフメット界隈で久しぶりに外国人観光客気分を味わったミフリ社長であった・・・・。 「客引き編」は終わり、次回「観光編」へ続く。 観光編と言っても期待しないでください(誰も期待していないって・・・)。 イスタンブルに詳しい人はいくらでもいるのだから、私は個人的なバカ話をさせてもらうだけ・・・。

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