2015年10月の記事一覧 | 続々・絨毯屋へようこそ　トルコの絨毯屋のお仕事記

私のイーネオヤコレクションの画像一覧はここです

今日10月29日はトルコの共和国記念日でお休みです。昨日の28日は午後からお休みです。明日の30日も急遽、公休になりました。明後日の31日は土曜日で11月１日は日曜日でお休みですよね。その翌日の11月２日（月）は１日が選挙のため、校舎などが投票所に使用されるため、その後処理があるので学校はお休みになります。というわけで。弊社も便乗してお休みです。（別に官公庁や学校に合わせて休まなくてもいいのですけど。）夏以降、息する暇もないほど仕事に追われていましたが、やっと暇になった・・・と、思いっきりぐうたらしているところです。で、ぐうたらはいいのですが、私の場合、これからたまりにたまったものを処分していくという作業が待っています。その一環で、イーネオヤのコレクション分を「instagram」に少しずつですが、載せています。すでに気が付いてご覧になってくださっている方もいらっしゃると思います。持ち主が怠惰なせいで、戸棚にしまわれっぱなしで日の目を見ることがないのですが、せっかくですから少しでも多くの人に見ていただいて何かの参考に、もしくは刺激になればいいなあ・・・と思って載せています。あとは自分向けの記録です。戸棚にしまいっぱなしなので画像のないものがたくさんあります。手放してしまえば自分の元に資料画像すらも残らないということになってしまいます。私がマメでいろいろできればいいのでしょうが、やる気なし、面倒臭い・・・で、簡単に記録画像を載せられるinstagramが精いっぱいです。もちろん近い将来、放出するという前提もあって、下見会も兼ねています。こういうコレクションは一度バラバラになってしまうと、なくなってしまうものです。できればまとめて一所にと思いはしますが、現実には無理でしょうね。（もし、そういう気持ちがある方がいたらぜひぜひお申し出ください）イーネオヤ博物館を作ろうというお話もいただきましたが、それはもちろん全て寄贈という形です。今はまだ寄贈という形では難しいですが、プライベート博物館を作ることも可能です。実際トルコにも各種プライベート博物館がありますね。でも私にはそこまでの大義名分も欲もありませんので、ひとまずinstagramでご覧いただければと思います。忘れなければ一日２、３点ずつは載せるようにしていますが、まだ60点ぐらいです。こんな感じで1000点ぐらいまで続きます。（これは売り物でない分で売り物は別です）instagramでは、お友達のほほえましい画像にほんわかさせられていますので、いつも楽しみにしています。こちらからは一方的に「イーネオヤ」の画像を載せるためだけの目的なので、お友達の投稿への「いいね」なども遠慮させてもらっていますが、別に他意も悪気もありません。ご容赦ください。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

ブルガリアのイーネオヤ

イスラム教徒の女性が被るスカーフのおかげで、縁飾りとして庶民の間に広がることで、多種多様に発展していったトルコのイーネオヤ。もちろんトルコのみにある手芸ではありません。周辺国でも同様のニードルワークが存在しています。イーネオヤというかレースの起源については諸説があるし、針と糸という単純な道具でできたことから、どこで発生してもおかしくないのですが、イーネオヤの起源に限定すると一説には中央アジア起源説というのがあります。それがトルコを経由し、近隣諸国にも広まったとも考えられます。「イーネオヤ」としての歴史はおそらく絨毯などの織物に比べるとそんなに古いものではないと想像します。現在、確認できるだけでアルメニア、ギリシャ、マケドニア、ブルガリアなどにもイーネオヤ同様の手芸が存在していますし、現物を見たことがあります。少なくともトルコ系の移民が住んでいるところにはある可能性が大きいというのも事実です。ブルガリアのトルコ村などには、現地の文様や色遣いと融合しつつ、トルコの手芸が伝わているところも多く見ます。これはブルガリアのオヤの本からの画像です。トルコ村に限らず、現地でも作っていた人がいたらしいのでミックス文化と言えるでしょう。現地の人の話では、スカーフの縁飾りというよりは、一般的にはシーツの縁、服の縁などとして作られてきたそうです。そのためなのか、モチーフもまたトルコと異なる大振りなものがあるようです。トルコだと一般的には基本の三角を土台に上に積み重ねていくものですが、この本にあるものは、間を開けて上にさらにモチーフを乗せる。目新しいものが見られます。また、これらは古いものかどうかは確認できませんが、段染めの糸１色でオヤを編むものもありました。トルコでは最近のトゥーオヤやメキッキオヤなどで見ることがありますが、こんなのも面白いですね。といっても、トルコ同様、今は昔の物語。この本を私に届けてくれたトルコ系ブルガリア国籍の友人の話では。技術は残っていて新しく作られているものはあるようですが、本来の伝統的なイーネオヤ作品は目にすることがなかったそうです。私はもうこれ以上手を広げるのはやめようと思っていますが、ブルガリアのトルコ村への手芸・オヤ旅もご案内できますので、興味ある方はお尋ねくださいね。トルコより国境を越えてクルマで行きます。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

トルコ・イーネオヤの旅・黒海マルマラ海地方編～最終目的地イスタンブルへ

ちょっと中断しましたが、イーネオヤの旅を続けます。なんとか無事にフェリーボートに乗り、イスタンブルのイエニカプに向かいます。イエニカプからホテルが集中するスルタンアフメットやベヤジット方面へ。距離的にはすぐ真上なんですけど、古い都市にある迷路のような道と地元の人にしか理解できない一方通行の細道を駆使しないとたどり着かないという・・・・・。一度通った道はGPS並みに案内できる・・・という私の特技。それでもイスタンブルやブルサ、アンカラなどはもちろん、地方都市でも新しい道はできるわ、立体交差や中央分離帯が増えるわ・・・・、見慣れない光景が突然目の前に現れる昨今ですので、頭の記憶容量もそろそろパンク寸前です。方向はわかっても、その道に出るまでの手順が昔に比べて複雑になっています。工事中のところも多いので渋滞も普段に増して一段と。地元の人なら抜け道いろいろ知っているのでしょうが、本当にイスタンブルを走るのは苦手です。今回泊まったホテルはオープンしたばかりの新しいところで、とても綺麗で快適でした。ビュッフェスタイルの朝食も種類が豊富でよかったです。建物の構造が変わっていて迷路みたいでしたけど。イスタンブルでの行動範囲はイーネオヤ関連で言うと、決まったところしかないのですが・・・・・。そしておもしろいのがオヤ好きのみなさまはオヤ旅では「観光は別にしなくていい」って言われるので、イスタンブルを見ないこともあるし、イスタンブルに来ても観光名所というのにはほとんどいきません。「オヤ優先」で時間がないというのも事実です。唯一、観光客っぽいのがガラタ橋でサバサンドを食べること・・ですかね。私は会社でも個人でも、仲介業以外ではイスタンブルで業者と取引をするとか買い物をするということはまずないのですが、今回はちょっと面白いものがあったので買ってみました。オヤ用のナイロン糸です。ナイロン糸は製造中止しているメーカーがほとんどで、地方の手芸屋さんの在庫から探すぐらいしか手段がありません。古いものになるので今では見ないメーカーや、ローカルのメーカーの糸などが誇りにまみれてあったりして、面白いのですが、今回のも「ネコ」のラベル。ナイロン糸で言えば、現行のオヤメーカー以外にも、ユヌス（イルカ）、クシュル（鳥の）、アトゥ（馬）など少なくとも30社はあげられます。過去にも各所でいろんなラベルの古い在庫品を見つけましたが、ラベルを集めるオヤ旅も面白いかもしれませんね。イズニックの村でおばちゃんたちとの別れに涙してきましたが、もうひとつの別れも迫っています。イスタンブルの空港から帰国する、オヤ旅仲間。18日間のオヤ旅を共に過ごし、日本にいたままでは一生かかっても見られないだろう数々のオヤとオヤに関する情報を共有してきました。トルコで得たこと、学んだことをどうぞそれぞれの活動にいかしてください。そして見たこと、聞いたことを興味ある人たちに伝えてください。それが広義であっても間接的であっても、お世話になったトルコとトルコの人たち、そして伝統手芸イーネオヤへの愛情であり、一番の恩返しになると信じています。（私はもう退きましたのでみなさんを応援する以外に何もできませんが・・・）そしてイスタンブルからまたフェリーボートに乗り、ヤロバへ。そこからアンタルヤまで南へ約600km。私たちの旅はまだまだ続くのです。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

売り切って終わりにします。人工シルク糸

人工シルク糸、おかげさまで本当に本当に残り僅かになりました。どうせなら売り切って終わりにしたいと思います。最後の３セットです。この人工シルク糸に関してはひとつ前のブログをご参照ください。　→　人工シルク糸A.50色50本セット売れました詳細はコチラ　→　「秘密のオヤ園・50色セット」B.20色20本セット　売れました詳細はコチラ　→　「秘密のオヤ園・20色セット」C.９色９本セット売れました詳細はコチラ　→　「秘密のオヤ園・９色セット」各１セットずつです。これで本当に終わりになります。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

売り切れ御免、数量限定オヤ用人工シルク糸

最初で最後の特別オーダーですので後続がないため、売り切れ御免になってしまいますが・・・。数量限定品ということで。オヤ用に用意された人工シルク糸です。コロンとしたかわいらしいボビンの人工シルク糸。以前から目にしてはいたのですが、価格が同様の他の人工シルク糸に比べて高いので、今まで取り上げたことがなかったのですが、実際に使ってみてもらうと、かなり好評。黒ボビンのシルク糸こと人工シルク糸より、紡ぎやすくて、出来上がりがカチッと収まるそうです。特定地域でしか販売されていませんので、あまりお目にかかることがないものですが。糸をボビンに巻いている工房のおじさんが「色は指定してくれたらいくらでも巻くからね」と言ったので「じゃあ、全色お願いします」って、最小ロットの１色24個ずつ208色をオーダーしてみました。それが７月中旬。ところが予測はしていたものの、できあがってきたのは10月上旬。揃うのに３か月間近くかかってしまいました。でも「トルコ人だからね・・・」とかっていう理由じゃないのです。この糸、とても特殊で、某大手糸メーカーの海外輸出専用ブランドの糸。海外からのオーダーで生産されて主にヨーロッパに輸出されているものです。トルコ国内には出回りませんし、もちろん輸出先でもオヤ糸として販売されているわけではありません。紡織用の工場向けの大きいボビンになったりするわけです。そのため、１色につき100個とか500個分とかの少量では生産してもらえません。かといってそれ以上の数量のオーダーは金銭的にも不可能ですので、海外からのオーダーが入った色を余分に作ってもらい、それが分けてもらう・・・というシステム。３か月間待たされたのは、色が揃うのを待っていた・・・ということなのです。全色の元糸の入手が困難なので、私自身は二度と200色以上のオーダーを出すことはないかと思います。工房のおじさんも「もう懲りたから次回はない」と断言していますのでよほど大きなオーダーが入らない限り、これが実質最初で最後になるでしょう。（売れ筋の40-50色程度なら手に入ります。）Facebookの「秘密のオヤ園」に掲載していますが、208色5000個近くありましたが、おかげさまで残りわずかになりました。色数だけは現在、約120色あります。ただ１色につき１個から、多くて２個か３個ずつしか残っていません。120色が出てしまったら、それ以降は100色、50色と色数が少なくなってしまいますので、興味のある方はお早目にどうぞ～。もし色数が少なくなっても普段手に入れることのできない中間色がたくさんありますので、お楽しみいただけます。仕訳していて気が付いたのですが、糸質がよく、光沢もあります。例えば同じグレー系でも20色近くあったのですが、微妙な差があり、とてもきれいです。最初はオヤ仲間や秘密のオヤ園から申し込んでくださった方限定で売り切って終わろうと思ったのですが、今回、糸をじっくり見てみて、広くみなさまにもぜひ手に取ってみていただきたいと思いました。糸の好みは使う方によりさまざまで、相性もあるかと思います。自分に合った糸が見つかりますように。面倒で更新しないままの弊社サイトには載せませんので「秘密のオヤ園」をご覧ください。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

トルコ・イーネオヤの旅・黒海マルマラ海地方編～ギョネン・ハサンベイ村のイーネダンテル

ギョネン市内にほど近い、ハサンベイ村。町への行き来がクルマで10分程度のところなので、村っていうイメージと違って物質的にも文化情報的にも隔離されている場所ではなく、住人の生活は思った以上に普通。だけど住人の女性のほぼ99％がイーネダンテルを作っているか、作り方を知っているという。年配の女性たちだけでなく、若い世代も作ることはできるらしい。へえーっ、と思ったけど、それはギョネンのオヤバザールが身近にあるという背景があってのこと。古くから、イーネダンテルなどを作っても、すぐそばに自力で出かけられる距離に、集客力のある売れる場所があるから作り続けることができるのである。案の定、イーネダンテルを見に来た・・・というと、「今、売り物はない」って言われてしまうのだけど。地域のデザインを見たいから・・というと、コピーがあるわ、と出してきてくれた。ギョネン独特の「スモモの花」のモチーフである。女性たちはこの現物をコピーしたものを見本にイーネダンテルを作るらしい。これは他の地域でも編み図があるからあげるわ・・・と言われて「編み図なんてあるんだ」と本やカタログ的なものを想像していると、コピーが出てくるのと一緒である。で、製品を探しているわけではないというこちらの意図がわかると、作りかけのものならあるわ、と見せてくれたものがこちら。他のお家にもお邪魔した。イーネダンテルは白一色だから、お花モチーフに比べて地味であるが、じっくり見るとおもしろいし、オヤをある程度習得した人はこちらに興味を持つことも多いだろう。また糸を長く使わなければならないダンテルだからこその秘訣もいろいろある。そのあたりを教えてもらい、真剣にのぞき込む。糸の話になるが、どの人もポリエステル糸を使用していた。なんでシルク糸使わないの？　という質問には「シルクが手に入らないから」という答え。もっともです。ギョネンでは20-25年ぐらい前からシルク糸が流通しなくなったといわれています。でもそのためにイーネダンテルを安価に売らなければならないことも、本人たちよくわかっている。実際、オデミシュのシルクものに比べて安いです。その分、他所でいいものを見てしまった人の興味や関心を引きにくいのも確か。安価に嫁入り持参品を揃えたい人にはとても強い味方である。ただ、高度な技術を持った手のきれいな女性たちの技術、芸術価値が正当に評価されないというのも何とも言えないです。でもそれはギョネンの女性たちの選択であり、使命なのかなとも思ったりもします。そんなことを思って、アンタルヤに戻ってからの話です。店にあるトルコ人のグループがやってきました。最初は古民具を見ていたのですが、私のイーネオヤスカーフを見つけてイーネオヤの話になりました。グループのうちの年配の女性はギョネンの出身でイーネオヤを作っていた、ということでした。私もつい先日、ギョネンのハサンベイ村に行ったこと、女性たちのテクニックの素晴らしさを告げて、でも糸がね・・・・と言いかけると、その女性も「糸がダメで、とても残念なのよ」と同時に同じこと言いました。化繊糸で満足しているわけではなく、そう思っている人もいるってことなんですね。さて、旅は続きます。天気の不安があったので早めにバンドゥルマに向かいました。フェリーでイスタンブルのイエニカプまで渡るためです。雨は上がっていたのですが、外海に近い場所でしたので波の心配がありました。１日に２便しかないうえに最終便でしたので、もし欠航なら他所からの乗船、場合によってはボズポラス越えを覚悟しなくてはならないのです。心配通り欠航の連絡が入り、他所も全て欠航らしいとか、いやバンドゥルマも運行するらしい・・・などの情報がいきかいます。実際、乗船口まで行ってみるのがいいと現場に直行しましたが、やはりフェリーは動かないようです。とっさに「ヤロバは動いていますか？　ここから何時便なら間に合いますか？」と尋ね、すぐにインターネットで21時45分のチケットを予約し、急きょヤロバへクルマを走らせました。雨は降っていましたが、ヤロバはマルマラ海の東端でイスタンブルへの距離も近いことから無事に乗ることができました。それでも天候が理由だったと思いますが、１時間15分で着くところを２時間半ほどかかって到着。今回のオヤ旅の最終地イスタンブルにやってきました。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

トルコ・イーネオヤの旅・黒海マルマラ海地方編～ギョネンのオヤバザールとオヤ糸

バルケシールのギョネンのオヤバザールに行ってきました。以前と場所はほぼ同じですが、どこの都市もそうなったように屋根付きのバザールの場所というのができて、その中で開かれます。その昔は道路っぱたに市が建ち、立ち売りの女性たちもところ狭しとたくさんいたものです。今回は犠牲祭の直後ということと、時間的にゆっくり（お昼過ぎに）来てしまったので、オヤ売りの女性たちの数が極端に少なかったです。たくさん見たかったら早朝に行かないとダメですよ。女性たちは多少お金が入ったら、今日はもういいやーって店をたたんで帰ってしまいますから。私は少なくともここ５、６年は行っていませんのでずいぶん久しぶりです。ギョネンのオヤバザールが、私にとってあまり魅力を感じるものではないというのが通わない理由です。まず売られているものが化繊糸のものばかり。そして古いものがない・・・。イーネダンテルが盛んな地域ですが、とてもきれいな手のものがあっても、糸がねえ～、になってしまいます。イーネオヤも同じです。（あくまで私にとっては、買うものが全くないのでつまらないという話です）でもイーネダンテルに興味がある人には天国です。オデミシュのイーネダンテルとはまた異なるモデルや作り方の秘訣があります。ここではレイラック（だったけ？）のポリ糸が好まれて使われていました。ですが、私たちが今回訪ねていったのは、ギョネンの地元メーカー、オヤルという糸屋さんの工場。私がいろんなメーカーの糸を入手しているのを知っているのでその情報と、各地のオヤ関連の土地でのオヤ糸事情を知りたかったようです。ご商売熱心です。結構な時間、トルコのイーネオヤ業界のお話をしました。マシンメイドのイーネオヤがギョネンで作られていることも知りました。イーネダンテルが有名なギョネンで、女性たちが手作りのイーネダンテルで内職をし、生計を立てようとしている一方、それを阻止するかのように安価なマシンメイドのイーネダンテルを作る業者がいるっているのは矛盾です。私たちが話込んでいる間、同行の二人は糸の工場と倉庫を見て、大興奮。結局、私が彼女たちのお買い物の終了を待つことになりました。でもメーカーの工場で直接お買い物なんて、なかなか楽しい経験ですよね。できたてホヤホヤの新製品もチェック。この糸に関しては実際に使ってみてもらって、いろいろ意見はあるのですが、それは試してみてからのお楽しみということにして、ここでは多く語らないことにします。ただ本物のシルク糸レベルの極細の糸なので、細かいイーネオヤが作れますよー、って言っておきます。さて、そんなこんなでその夜はギョネンでもうひとつ有名なもの。そう温泉ホテルに泊まり（硫黄の匂いでどの部屋もウ〇チ臭くてたまりませんでしたが）、翌日はギョネン市内からすぐのハサンベイ村にイーネオヤを作る女性たちを訪ねます。------------------------------------------------------------------------------------オヤルのオヤ用20gポリエステル糸149色149本セットを「秘密のオヤ園」と「ヤフオク」で出しています。硬めの使いやすい糸だそうです。興味を持たれた方や試してみたい方に。　オヤ糸の購入はコチラ　→　「秘密のオヤ園」　　　　　　　　　　　　→　「ヤフオク」にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

トルコ・イーネオヤの旅・黒海マルマラ海地方編～ブルサでのいろいろとヨーロッパの美しい村30選

イズニックからブルサまでは一時間半ほど。ブルサの渋滞がなければ・・・ね。の話ですけど。ブルサの混雑と交通マナーの悪さは今に始まったことではない。15年ほど前からクルマで行き来しているけど、市内中央部は運転得意な人でも嫌になってしまう。車線があってもないのはもちろん、急な横入り、無茶な進路変更、急ストップ急発進・・・。ブルサの人って文化人が多いせいか、おっとりした物腰の柔らかい人が多い・・・・って言われているのだけど、どうして運転だけは違うの・・・っていつも不思議に思う。でもブルサで運転するなら、ブルサ式に運転しないと逆に渋滞を作り出す。ブルサのウルジャミイ。コザハンの屋根。シルクロードの時代、蚕の繭が取引されていた場所である。今ではシルク関連やスカーフやショールなどのお店がたくさん並んでいる。しかも値段が安いのでお土産買うのにもいいかもね。ブルサでの見るべきところはいくつかある。ウルウマイの民族博物館とか。シルク糸の工房とか。民族衣装の展示も多い、カラギョズ（ブルサの影絵芝居）博物館とか。中心部から離れているから、ちょっと行きにくいけどね。布や糸の問屋さんとか（ヤズマとかオヤ糸メーカーはブルサに集中している）裏通りや地下やら、自分で探すには困難だけど、大都会のバザールだけど観光ズレしていない分、いろいろ見て歩くのはとても楽しい。そしてブルサはチェキルゲという温泉地がすぐ近くにあり、ハマムに行くとたいてい浴槽がある。大浴場みたいのから、毎回お湯を入れ替えられる貸し切りで風呂まで。イスケンデルケバブの発祥の地で、ケスターネシェケルという栗のシロップ漬けが有名。後ろにはスキー場があるウル山がそびえている。そしてヨーロッパの美しい村30選に選ばれたというギョルヤズがある。ギョルヤズ、別名アポロニア（アポリオン）で紀元前７世紀から続く歴史ある村である。オスマン帝国の攻略の際にブルサやイズニックから逃げてきたキリスト教徒たちが隠れ住んだそうだ。おもしろいのが立地で、大きな湖の半島の先にある円形の半島である。一見、島かと見間違えるが橋のかかる部分でつながっている。城壁跡が半島をぐるっと取り囲み、時代の異なる建造物を見ることができる。その半島の中に古いトゥーラルエフ（レンガ造りの家）が並んでいる。といってもレンガ造りの家はもう数えられるほどしか残っていないのだけど、小さな半島でぐるっと歩くとお散歩距離にちょうどいい。私がこの前に来たのは約10年ほど前の話。観光客は来るらしいのだけど、ほとんど変わっていなかった。でも世界の美しい村30選（だっけ？）に選ばれたのだから、今後は観光化も進むのかな・・・と思う。というわけで今のうちにもう一度見ておこうと思って来たのだけど、古いきれいな状態の家が意外と少なくて廃墟見学のようになってしまった。数年後には（良くも悪くも）シリンジェ村のような変貌を遂げるのかな。この島には楓が多いそうだけど、一番お年寄りの樹。750歳だそう。もうひとつ、ブルサでの出来事。Facebookで私の骨董イーネオヤのコレクションの画像を、売っているのか、買えるのか・・・と見ていてくれたアンティーク・コレクターのトルコ人男性。オフィスに招待されたのでコレクションのいろいろを拝見してきた。各地で集めたという古い家具は最高に素晴らしかった。私はもう集めることはないだろうけど、保管場所や設置場所があったら欲しかったなあ・・・と思うものばかりだった。その中でひとつ、古いイーネオヤケース。もう少し新しめのイーネオヤケースは村の家庭で見ることができるけど、ここまで古いのはなかなかお目にかかれない。で、資料写真。ご参考までに。下の箱３つがそう。右上は香料とか薬とか入れていた（たぶんね）ケース。------------------------------------------------------------------------------------デザインはナウルハンのアクセサリーの真似っこになってしまいますが、実はナウルハンができないことをやってくれました。どうです？この色合いと風合い。現物は数倍素敵です。実はコレ。蚕の繭からとった本物シルク糸を、天然染めした糸で作ったアクセサリー。ご存じのように、ナウルハンのアクセサリーは「シルクのイーネオヤアクセサリー」と言っても、シルク０％のブルサのポリエステル由来の人工シルク糸で作られています。そのためざぶざぶ洗えますし、発色が明確で綺麗です。扱いにそれほど気を使わなくてもいいし、気軽なアクセサリーとしてはベストです。ソレはソレ。そしてコレはコレ。シルク糸で女性たちの手による天然染めですので、色褪せの可能性と洗い方に注意をしなくてはいけないという問題点もあります。つまり普通のシルク製品のように扱いに繊細さが必要になります。でも特別な日の１点として考えるなら、本物シルクを身に着けるというのはやっぱりいい。それにデザインが同じなのですが、糸質と染めが本物だと年齢を問わず使えそうです。トルコにおけるシルク糸の話ですが、高度な技術と時間をかけて新しいイーネオヤが作られているのを見ます。問題は糸が化繊の糸であること。どんなに頑張っても、シルクの風合いや繊細さは出せないです。（某糸メーカーの社長は「シルクの雰囲気を出せる化繊オヤ糸」を考案中ですが、それが意味があることなのかどうかは私にはわかりません）ここまで手間をかけて、なぜシルク糸を使わない？　と思っているのですが、シルク糸を使わない理由は実は明らか。シルク糸が手に入らないから・・・なんです。「これだけの素晴らしいもの、シルク糸で作っていたら現在的にも将来的にも評価も価値も上がるのに」と言うと「そうなんだけど、本物のシルク糸をどこで手に入れたらいいっていうの？」と決まって言われます。そしてシルクに関しては無シルク時代があり、時間的な経過もありますのでシルク糸を私が用意したとしても、扱い方を知らない地域と世代があふれています。今でも残念なことに、新しく出た人工シルク糸をトルコ国内では「シルク糸」という認識で、購入し使用しています。買う方も売る方も「シルク糸」だと思い込んでいます。そしてこの糸で作られた製品も「シルク製品」として出回ってしまうという事実。これについては売り手の問題が大きいです。「sunni ipek」（人工シルク）というところを、略して「ipek」（シルク）と言うからです。そしてこれ人工シルクでシルク入ってないよねー？　と尋ねると「sunniっていうのは人工ってことで、つまりはそのあの・・・・」と言葉を濁します。よほど詳しくなければ、メーカーさんや売り手に「シルク」って言われたら、そのまま「シルクって信じるのが普通ですよね。私がいくら頑張っても「外国人になにがわかる。トルコのことはトルコ人が一番知っているのよ」と言われておわりです。私も年取りましたからね。そういうことを言う人には、面倒と思いながらも、糸燃やして違いを説明しちゃったりします。地道な「シルクと人工シルク糸は違うんだよ」キャンペーンです。と思えば、シルク糸を今でも扱っている地域では、その違いをはっきり語れる女性がたくさんいて、話が楽しいです。シルク糸の良さもよくわかっていて「そうだよね、そうだよね」と頷いてしまいます。・・・別にいいのですけどね。使用目的も製作者の意図もそれぞれですから。知らないのは仕方がないです。ただね、私がシルクにこだわる理由はただ一つ。イーネオヤ人口が一瞬でも増えた2010年代の軌跡として、300歳になった骨董コレクターの私が欲しいと思えるような、素材にこだわったいいものを、後世に残して欲しいと願う気持ち。そのときまでに新素材がたくさん出ていて、ポリエステル素材が古さの象徴になっていたりして・・・考えたくない。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

トルコ・イーネオヤの旅・黒海マルマラ海地方編～お別れの日

村に残してきた二人を迎えに行く。つい先日、似たような瞬間を体験した気がするけど、情の深い村の人たちとのお別れは本当に後ろ髪惹かれる思い。村に着くと、朝食後の路上でのイーネオヤタイムが始まっていた。人工シルクの糸の撚り方や、イズニック独特のモチーフの作り方の復習などを、女性たちと一緒に。別れの時は迫っているのだけど、時間ぎりぎりまでこの空間を壊したくない。私たちがゴザに座っていると、普段は近寄ってこないこの家の孫娘もやってきて、一緒にオヤを作りたいと言い出した。昨夜、もらった日本の布に大おばさんから習いながら針と糸を持ってオヤを作る。わからなくなるとそばにいる大おばさんを呼ぶ。周囲の女性たちから「針を手にさせばすぐに覚えるよー」と言われる。みな子供のころ、針を手に刺して血を出せば上手になると言われたそうだ。それだけ痛い思いをしたら、針を刺されるのが嫌で必死になるから、すぐに覚えるだろう・・・ということである。もちろん今はそんなことをする人はいないのだけど、昔は実際にあったそうだ。針仕事が女性たちの生活と切っても切れないものだったのだろう。朝のこの風景は、演出ではなく、サービスでもなく、この村の日常。夕方からも同じように道端に座り込み、イーネオヤをする女性グループの姿があちらこちらで見られる。イーネオヤをするため・・・というよりは、近所の女性たちがなにげに集まり、井戸端会議をしながら手も動かしているというのが正しいかもしれない。ただ今回お世話になったこの家族も来年にはイズニックの町に引っ越しをする。孫娘が来年小学校に入学する年になるが、村の学校は現在１人の先生が４学年を一度に担当しており、来年は廃校になるため、クルマで小一時間のイズニックの町の小学校まで通わなければならなくなるからだ。村からのダイレクトな交通手段がないため、スクールバスが通る道路までの送り迎え、実質的に不可能。それなら孫娘のために一家で引っ越しをしようということである。そしてもう一つの理由には経済的な事情がある。村には働く場所がないのである。唯一の収入源のオリーブ畑も今年は害虫と台風の被害で１kg40円にまで落ちた。働いても働いても十分な収入が得られない。それでも40円のために経費をかけて畑に出なければなにも手に入らないから行く。以前はムシュクレの村ははちみつの味がするムシュクレ葡萄で潤っていた。それが害虫被害により、畑がつぶれ、その後のオリーブ畑も以前ほど稼げない。村人は望む望まず町に仕事を探しに行かなければならないのである。現在でも村から町に引っ越した住人がたくさんいる。町に行けば町の生活が待っている。自然とイーネオヤ作りから離れてしまう。村の女性たちの楽しみは、路上でご近所さんと集まってみんなで手を動かすイーネオヤ作り。それがアパートの中で一人で黙々では気分が乗らなくなるかもしれないと言う。そうして時間とともにこの村の風景も消えていくわけだろうけど、少なくとも、私たちはこの村でイーネオヤを作る女性たちと道端でゆったりと過ごした時間を忘れることはないだろう。また会いに来るね。いつも思う。そのまた会える日が本当に来るかどうかわからない。時間とともに村も人も変化していく。翌年訪れていなくなっている人、イーネオヤを作ることをやめた人、たくさん見てきた。理想の中では閉じ込めておきたい、いろんな思いや気持ちはあるけれど。現実はそのとき、そのときの出会いと時間が全てと思うしかない。私たちが変化し続けるように、トルコの人たちの生活も日々変化するのだから。お別れの時。また会いに来るね。-----------------------------------------------------------------------------------「秘密のオヤ園」に旅のおすそ分け品を掲載しています。今回のオヤ旅で集めた各地（アイドゥン、オデミシュ、ブルサ、キュタフュヤなど）の古いイーネオヤ、地方の手芸屋さんの在庫品から見つけたオヤ糸などがお買い得な価格で出ています。古いものや各地の伝統的なイーネオヤに興味ある方はぜひのぞいてみてください。　コチラ　→　秘密のオヤ園にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ

トルコ・イーネオヤの旅・黒海マルマラ海地方編～割礼のベットと儀式その2

割礼の儀式の続きです。村の若者たちが、事前に割礼の男の子の母親が準備しておいた、お盆の上に載せた王子様のような白い衣装を担いで、村の広場まで歩きます。先頭に子供たちの父親、その後ろをお盆を持つ若者が２人、後方には若者たちが、引き連れた音楽隊が演奏するなか、歌を歌いながら列をなします。途中、ところどころ止まりながら、若者たちのダンスが繰り広げられます。聞くところによると、それぞれが想う女性のことを、古いトルコの歌に代えて歌ったり、ダンスしたりしているそうです。そうして村を練り歩くことで、自分の想いを相手の女性に届けているのです。（その昔、直接口をきくことが許されなかったころの気持ちの伝達方法ですね）距離的には数百メートルなのですが、そんな風に長い時間をかけ、広場に設置された絨毯の上に衣装のお盆を置き、今度は子供たちを迎えに行きます。白いタオルを羽織った子供たちが村の広場に向かいます。今度は男性だけではなく、母親を含めた女性たちも行列の中にいます。そして今度は赤いスカーフを腕に巻いた男性が、お盆にトルコのお酒ラクと鶏の丸焼きを載せて先頭を進みます。広場に到着すると、絨毯の周りに村の長老たちが座り、その前で子供たちが、身内の男性の手によって着替えさせられます。身内の男性たちは普段しない、不慣れなことをするので、子供たちの服を間違えたり、着せる順番が違ったり、周囲の女性たちから「違う、違う、それはこっち」などと言われますが、女性は手を出せず、耳にした他の男性が立ち上がって直しに行ったりします。なんとか着替えが終わりました。イマムによるお祈りの言葉が捧げられ、子供たちが長老たちの手にキスをして、祝福を受けます。脱いだ服の上には長老たちが置いた紙幣が重なっていました。そして男性陣と子供たちによるダンス。一旦、家に戻り、今度は馬に乗って村を練り歩きます。昔は馬にもいろいろ装飾を施したらしいですが、その名残としてお母さんが用意したイーネオヤのついたタオルが馬の顔の横に下げられていました。もう１枚のイーネオヤのついたタオルは、公開散髪のときの床屋さんに渡されたそうです。これ以外にも途中、途中、変わった風習が行われていましたが、こういった披露宴や儀式というのは、当人や家族の大イベントであり、また同時に村の若者たちのエネルギーの発散の場であったり、親たちが自分の娘や息子に結婚相手探す機会だというのがよくわかります。とくに何も娯楽がない村生活では、想像以上に大切なことなのだと思います。こうして４日間にわたる割礼の儀式は終了。翌日には子供たちの新学期が始まります。そしてオヤ修行の二人は、村の家庭にホームステイし、夜もサモアールでお茶を沸かしながら、ご近所さんたちと家の前の道端に座ってオヤを作ったそうです。にほんブログ村手芸(その他・全般) ブログランキングへ