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カテゴリ:トルコの手工芸
嫁入り道具として用意されたたくさんの布たち。 それぞれに思いや祈りを込めて、地方や部族、独特の文様を縫い込みます・・・・・。 「布支度」シリーズ。 第4回はビンダルルに施されたマラシュ刺繍の話 ビンダルルというドレスがある。 金糸・銀糸による刺繍を施した、 本来、花嫁のウェディングドレスに当たるものである。 現代トルコでは結婚式や披露宴では普通に純白の西洋式ドレスを着るので、クナゲジェシと呼ばれる、結婚式の前夜に行われる花嫁サイドのお別れパーティーの際に、娘に着させる家庭もある。 ただそれも通常は入手しにくいものであるので(作り手がいない、ミシン刺繍のものでも高価である、若い娘はもっとモダンなドレスを着たがる、などの理由で)、徐々に色付きのドレスという意味に変わって、金糸銀糸のビンダルルと見た目も異なるものになりつつある。 昔は母親が着たものを直して娘が着たようだけど、それも残っている家庭も少ないし、着たがるお嬢さんもいない。 上2つの画像のものは、シルクのブロード、コットンブロードの上にスルマと呼ばれる金糸、もしくは銀糸で手作業により刺繍されたもので、オスマン帝国時代のものである。 特に1枚目のビンダルル。 まるで本物の房が付けられているように見える。 これも刺繍である。 それほど細かく、密に刺繍が施され、そのため糸の重量でずっしりしている。 その重さは実際に着て試したので、嘘はない。 この下には長襦袢的な下着ドレスと、ダボッとしたパンツを履く。 ビンダルルは地域的にはトルコ全土で見ることができる。 ただし、この技術を持っていた地域は限定されるようで、昔はその土地に依頼したり、その技術を持っている職人さんが作ったようである。 もちろんこれだけの手間暇をかけるのだから、依頼主はある程度お金を持っている家庭になる。 もっと簡素なタイプの金糸、銀糸刺繍のビンダルルやジェプケンと呼ばれる上着、その他の正装となる衣装もあるが、写真のものはかなり手をかけているタイプのものである。 さらにビッチリ隙間なく作られているものもある。 この刺繍、「マラシュ・イシ」という。 「マラシュの手仕事」という理解でいいと思うが、マラシュは南東部にある都市名である。 トルコののびるアイスクリーム、ドンドルマで有名な地である。 その土地の名前がついているのだから、マラシュから始まったテクニックだと想像するが、今の私はすっかり忘れて、正しくお伝えできる情報は持っていない。 実は20年ほど前、日本の大学の先生の依頼で、マラシュ・イシについて作り方を一緒に調べに行ったことがある。 マラシュ・イシは刺繍と言っても、盛り上がったもので、糸の下に紙や接着剤を含めて何種かの材料を重ね合わせた厚紙にモチーフを書き、それをくり抜いて、布の上に縫い付け、それを覆うように糸で刺繍していくものであった。 材料の重ね方にも規則があり、当時はきっちり情報を得たにも関わらず、もちろんメモを取らない私は、何も覚えていないのである。 現代ではミシンによる刺繍でマラシュ・イシが継続されているので、新しいドレス、クロス、タオルなどの上に形状的には似たものを目にすることができる。 もちろん手作業によるものとは異なり、妙に小奇麗で魅力は半減するけど。 ところでビンダルルの意味を考えてみた。 「bindallı」と書く。 bin の dal が lı ある。という意味になる。 つまり1000の枝があるものという意味。 ビンダルルのモチーフは花や木がメインなので、それほど枝分かれした込み入った賑やかなデザインが描かれた・・・・という意味と解釈していいのだと思うけど、どうなのでしょう。 にほんブログ村 手芸(その他・全般) ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
May 8, 2015 12:28:37 AM
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