かくの如き語りき

2004/05/29(土)02:08

【幕間】ナンバ壱番館~タケシの青春

嬉しかったのだろう、タケシは。 浅草の小さな店の壁に、 タケシのサインを飾るスペースが空けてある と、テレビで知った彼は すぐさま弟子たちを連れて その店にサインを書きに行った。 世界のタケシ、 浅草のストリップ劇場から始まった青春。 エレベーターボーイだったそうだ。 それがある日、舞台に出るハメに。 キヨシに誘われて、漫才師になるハメに。 お揃いのアロハシャツを着て 「ハワイから戻ってきました~」 と言うだけのキヨシはタフな奴だった。 お店の人のヒモになったり、 メッタやたらといろんな師匠に弟子入りしたり。 タケシの師匠は一人なのに、 タケシの師匠を名乗る方が多いのはそれが故。 タケシとよくツルんでいるヨーヒチは 救いようのないウソツキだ。 料理は上手いようだが 平気で金をねだりにくる、タケシは知らぬ顔だが。 二人は漫才ブームで稼いだ金を持ち 銀座に遊びに行ったそうだ。 「ヘネシー?レミィ?そんな姉ちゃん、知らねー。」 明治大学を中退してストリップ劇場へ。 タケシは思っていた。 浅草で、死んでもいいと。 タケシ、サラリーマンの人のくれたご祝儀を 今でも使わないで持っていると言う。 月収16万円がとうに1500万円になっていても いただいたご祝儀は使えない。 サラリーマンが喜んでくれたからと 調子に乗って嬉しそうにしゃべりまくっていたらしい。 既に人気ものだったのに。 嬉しかったのだろう、タケシは。 草野球好き。 ドシャブリの雨でも野球の準備をしていた。 一般の草野球チームとの対戦だ。 待っていてくれるだろうと出かけてく。 野球もしたかったんだろうけどね。 勉強は種を播くことだと言う。 本を読み、映画を観る。 いつか播いた種は芽を出すのだから、と。 「世界のタケシ」の花が咲くとは 思ってもみなかっただろうけど。 そして出かけていくのだ。 彼のサインを待っている場所へ。草野球のグラウンドへ。 かなり強引、わがまま放題。 つきあわされる者はたまったもんじゃない。 困ったことにいつも嬉しそうだから ついつい、つきあってしまうのである、 テレビの画面を通して、 映画のスクリーンを通して。 --------------- 2004年2月19日放送「ナンバ壱番館」(大阪・毎日放送)より。

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