21センチ。
その長さ腰のあたりで二人は共有している。。
両手は自由に動くが、前に歩くには、
歩調が合わないとならないだろう。
弟はボブ、兄はウォルト、テナー兄弟。
ちっとも似ていない二人は結合双生児である。
性格も似てないようだ、
弟は内気で緊張すると、
ぜーぜーはーはーパニック症になる。
兄は社交的、女の子に積極的、
夢はハリウッド俳優になること。
肝臓がボブにあってウォルトにないから、
見た目の年齢も全然違う。

監督・脚本・製作は、
ボビーとピーター、ファレリー兄弟。
彼らの作品の中にあるあたたかさは、
他に類を見ないだろう。
コメディという器は崩さない。
だが、観る側に笑顔をくれるのは、
300ポンドの女性だったり、
ストレスで二重人格症状の男だったりする。
そして今回のテナー兄弟も、
作品の中でいじめられたりからかわれている。
しかも、車椅子の老エージェントが行き交い、
知的障害を持つウェイターがいる。
悩みは人一倍抱えているだろうが、
彼らは明るいのだ。
そしていつも、戦っているのだ。

ウォルトがゴルフをすれば、
ボブがキャディを務める。
ウォルトがSEX中は、カーテンをはさんで、
ボブがパソコンをいじっている。
ボブのメル友の女性がやってくれば、
ウォルトはくまの着ぐるみ着てぬいぐるみのフリ。
二人が経営するハンバーガーショップの厨房では、
見事な連携プレーでたくさんの注文もお手のもの。
幼い頃からたくさん話あって、
二人で一緒に生きるのだと決めたのだ。
なにせ、肝臓があるのはボブのほうだけ、
手術をすれば、彼は助かるがウォルトが危ない。
それよりも、ありのままに、
仲良く楽しく彼らは生きようとした。

しかしまあ。
感動的になりそうで、コメディの器は崩さない。
俳優として人気がでたウォルトと、
メル友の彼女とイイ感じのボブである。
それぞれの人生が見えてくれば、
苦渋の決断で手術する。
あっさり成功するが、その後が大変だった。
二人なら上手くいったのに、
一人だと上手くいかなくなっていた。

マット・デイモン、グレッグ・キニア、
腰で結合されたままの演技ながら、
コメディに必要な絶妙の間合いで動いてみせる。
ただ歩くためにも息を合わせる必要がある、
相手を理解しようとしない役者には、
無理な役柄だったろう。
シェールがわがままな大女優の本人役、
自虐的な役を悠々とこなすのも可笑しい。
メリル・ストリープも本人役、
彼女の方は何故か、性格のいい大女優である。
実はハリウッドを舞台にした、
アカデミー賞俳優、そろい踏みの映画、
もちろん、この作品、賞なんて欲しがってない。
豪華な出演者さえも、
コメディのネタなのだ。

この作品のあたたかさは、
役者の一人として登場した出演者によって、
エンドロールの半ばで語られている。

がんばれ。
口が裂けてもファレリー兄弟はそんなこと言わない。
傷つきたくないのなら、外に出なければいいだろうが、
けれどもそれで、何もかも諦めていいのか。
だからハリウッドにふたりはやってきた。
幼い頃から、負けん気は人一倍だったようだ。
もちろんテナー兄弟もがんばれ、なんて欲しがってない。
だからこそ、この作品はあたたかいのである。