カテゴリ:介護のお仕事 素敵な老人達
今日はみけマンマ、久しぶり入浴介助でした。というより、新人さんが、いまだに機械浴(寝浴 寝たきりの方を寝たまま入れるお風呂)の動かし方を知らないというので、新人さんに機械の動かし方、効率的な介助の仕方などを教えながら、入浴介助をしていました。
一通り、夕方までに何とか10人を入浴。 やれやれ、と思って、あと一人。丸山さん(仮名 80代 男性)。丸山さんは体調が悪いので、入浴は無理だな~清拭(身体を拭く事)で行こう。 清拭セットを持って丸山さんの所へ行くと、丸山さんは顔だけ動かして 「なんや、みけマンマかいな。相変わらず忙しそうやな。」 「忙しいよ~♪でも、今から清拭するから。ず~とお風呂入ってないでしょう~いい男が台無しやで♪」 「またそないな事言って~ワシは昔っからええ男やっつーの。」 髭を剃ったり、身体を拭いたりして、服も着替える。 「はい♪すっきりしました~?」 「…。ズボン、後ろ前、反対じゃないか?」 見てみるが、ちゃんとズボンは前だ。 「ちゃんとズボンはこっちが前ですよ~、ほら、手を入れてみて下さいよ。」 丸山さん、手で確認。 「じゃ、これから夕食ですからね♪」 みけマンマが清拭セットを片づけていると、また丸山さん 「ズボン、後ろ前、反対やろ。」 「そんなことないですよ~ほら♪」 確認。 そして、またみけマンマが部屋を出ようとすると 「ズボン、後ろ前や。」 「そんなことないですよ~ほら♪」 「ぜ~~~~ったい、後ろ前やもん!!」 そんなこんなを10回近く繰り返す(笑) 「ほら、もう一回履いたでしょう。こっちが前♪」 「…。」 「丸山さん、うち、明日も来るさかい。そない心配せんでもええよ。」 丸山さん、ベット柵の隙間から涙目でこっちを見ている(汗) 丸山さん、寂しいのはよ~~~く、分かります。 明日も来るから。 こういう施設にいる方は、ほぼ100パーセント、寂しいのです。 どんなに、 ここが終の住みかだと理解してる人でも、本当は、うちに帰りたいのです。 以前勤めていた施設でも、今の施設でもそうですが、職員が 「ここで機能回復できるよう、一緒に頑張って、元気になりましょうね♪」 と入居者に言うと、家族からクレーム来たりします。 「お金払って、死ぬまでここで面倒みてもらわなければ困るのに、なんて事言ってくれるんだ!」 確かに、死ぬまで面倒見ます。でも、介護職員は決して 「ここで死んで下さい」 「一生家には戻れませんから、一生をここで過ごして下さい」 とは言えないのです。 みんな、家に帰りたいのです。 毎日毎日、荷造りをして 「こちらでは本当にお世話になりました。今日をもっておいとまさせて頂きます。」 と三つ指ついて頭を下げる女性も一人や二人ではありません。 帰り際、一番高齢の90代の男性の部屋を訪室すると、 「おや、お前さん、もう帰るのかい?」 「明日も来ますので♪顔見に来ましたよ。」 外を見ると、台風の影響か、風の勢いが凄い。 「台風が来てるみたいですよ。今日は洗濯物もとんでっちゃうぐらいの風でしたからね。」 「わしも…天国まで飛ばしてくれんかのう。」 「な~んて事言ってるんですか~。寂しいじゃないですか。」 彼は、ふっとうつむくと 「もう、わしはひとりぼっちだ。故郷にも帰れず、ずっと一人だ。寂しいぞ。」 いつも明るい彼が見せる、心の本音だったと思います。 今の時代、自分の家で最期を迎えるなんて、夢のまた夢なのかもしれません。 昔いた施設で、タカさんという70代の女性(仮名)がいました。 とても頭はしっかりしていましたが、身体がすでに拘縮していて、かっちんこっちんでした。 タカさんはずっと独身で、身よりもなく、お金はありましたが、彼女の部屋はいつもひっそりしていました。 タカさんはとてもお洒落な方でしたので、できるだけ職員も口紅を塗ってあげたりして、お洒落を維持できるようにしていました。 そんなタカさんが、午後、突然ベットの上で号泣しだしました。 「タカさん、どうしたの、どうしたの。どこか痛いですか?」 「…。寂しい。」 「寂しいんですか。」 「寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。」 タカさんは歯が折れるんじゃないか、というぐらい食いしばって泣いていました。 「タカさん、みんないるよ。一人じゃないよ。」 みけマンマらが手をにぎって話しかけても、タカさんはずっと泣き続けました。 それからしばらくして、タカさんは脳梗塞で入院し、病院の窓際のベットでひっそりと、夜中の12時に天国へと旅立って行きました。 「すみません、この人、どこ連絡していいのか分からなかったので、こちらの施設に連絡させてもらいました。今、亡くなりました。」 タカさんは、死をもってようやく底沼の孤独から解放されたのだろうか。 誰か故郷を想わざる 西条八十 作詞 古賀政男 作曲 一 花摘む野辺に 日は落ちて みんなで肩を 組みながら 唄をうたった 帰りみち 幼馴染みの あの友この友 あゝ誰か故郷を想わざる 二 ひとりの姉が 嫁ぐ夜に 小川の岸で さみしさに 泣いた涙の なつかしさ 幼馴染みの あの山この川 あゝ誰か故郷を想わざる 三 都に雨の 降る夜は 涙に胸も しめりがち 遠く呼ぶのは 誰の声 幼馴染みの あの夢この夢 あゝ誰か故郷を想わざる お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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