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2020.08.08
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戦前のドイツ光学界のシンボル的な存在であった、
35mm判用のカールツァイス・イエナのゾナー50mm。
最初に1931年にf2が登場して、更にそれを改良したf1.5という、
大口径レンズはカールツァイスの名声を高めるには十分な役割を果たしてきた。

実は、それに先立つ1925年に、ドイツのバート・クロイツナッハにあった、
創業1890年のJos. Schneider Optische Werke GmbH で、
当時23歳のアルブレヒト・ヴィルヘルム・トロニエ氏によって生み出されたレンズに、
非対称でダブルガウス型のクセノンというのがある。

エルネマンのベルテレ氏とクリュグハルト氏による、
1923年に登場したf2のエルノスターレンズは、
暗い室内撮影を可能にして世界に衝撃を与えた大口径レンズだった。
1924年に、シュナイダーへ主任レンズ設計者としてやってきたトロニエ氏は、
いきなりエルノスターと競合するレンズの設計に挑戦する事になる。

トロニエ氏は大口径のf2レンズの開発にあたり、
イギリスのテーラーホブソンのホレイス・ウイリアム・リー氏が、
1896年にカールツァイスから登場した対照型のプラナーを発展させて、
1920年に開発した変形ダブルガウスのオピックを参考にした。

やがて、プロジェクト開始から3年後の1925年にはクセノンf2の特許取得を完了。

戦後、トロニエ氏はイギリスの職業行政により、
フォクトレンダーの主任レンズ設計者に任命され、
ウルトロンやノクトンといった数々の名作を生み出していく事になる。


一方、戦前のライカは、コンタックス用ゾナーレンズの成功を横目に見ながら、
f1.5クラスの大口径レンズの必要性に迫られて、
クセノンを開発したトロニエ氏が在籍していたシュナイダーに協力を仰ぐ事になる。

そして、テーラーホブソンのイギリスPat.373950と、
アメリカPat.2019985の特許を使用して、
元はシネマレンズとして作られた、クセノン5cmf1.5を1936年に引っ張り出すけど、
結局は、4年前に登場していて既に市場の評価を独占して実績のある、
ゾナーf1.5のライバルとはなり得ず、少数の生産で終わってしまう事になってしまう。

戦後になり登場した、次のズマリットは殆どクセノンの焼き直しだったけど、
次の1959年に登場した第一世代ズミルクスは、まだクセノンを下敷きにしていて、
これには、新しいランタン系の硝材を使って性能を向上を図る事になるけど、
この手法は、戦前のf2クセノンを新種ガラスでリセットしたウルトロンと似ている。

それでも、ズミルクスは1962年登場の第二世代になると、
ライツ・カナダのウォルター・マンドラー氏により再設計がなされて、
ズミクロンと同じ空気レンズを採用して、ようやくクセノンから離れる事になる。
更に離れていた後群を貼り合わせた、後期型は第三世代と言えるもので、
その後30年に渡り、基本的にはそのまま使われる事になる。


気体のXenonは、「奇妙な」とか「馴染みにくい」を意味する、
ギリシャ語のξένος (xenos)が語源らしいけど、
トロニエ氏が、同じ綴りのXenonと名付けた理由は何だろうか。
1889年に発見されたばかりの、大気中には0.087ppmしか存在していない、
新しい希ガスとイメージをダブらせたのかもしれない。


戦前の、最小絞りがf9という特殊な大口径レンズを戦前のバルナックライカに付ける贅沢。
当時であれば、ホンの一握りの好事家か、ホンの一握りのプロでしか手にできなかったレンズだ。

クセノンは、日本ではガスの呼称でもおなじみの、キセノンと呼ばれる事もあるけど、
アメリカ人をはじめとする英語圏ではゼノンと発音するので油断ならない。

家にあるのは、淡いコーティングが施されているタイプ。
四半世紀ほど前の入手時は、絞りが固くて、ヘリコイドも重くて、
オマケに内部には薄いクモリを生じていたジャンクレベルだった。
この貴重な文化遺産は、とてもじゃないけど流石に自分でバラす勇気はなく、
リペアでは日本でもトップレベルの技術を持つ、関東カメラサービスにお願いした。
ホンの

レンズフードは後継のズマリット用が使える。
フードを付きのダイナミックなデザインは、写真を撮る道具の究極的なものの一つだ。
戦前の第三帝国時代のアールデコや表現主義にも通じるような気がする。


クセノン5cmf1.5の作例(全て銀塩写真)

離れているのに、お狐様の眼力が一直線に集中してくる。


モダンとレトロの対比が面白くて、行くと必ず訪れている場所。
奥の瀬戸物屋さんは閉じてしまったので、いつ更地になってしまうのか気が気でない。


開店前のお店で窓越し日向ぼっこのネコ。
鉢植えのネコ草を前に、「なんじゃ、お前。」といった所。


クセノンは猫を呼ぶ。カメラを向けると寄ってきた猫。
カメラを外すと立ち止まり、近付こうとすると逃げてしまう。
良く分からないと思うけど、実はもう一匹、黒猫がVWポロの前を横切っている。


木戸の上にいるネコ。たまに見かけるけど逃げてしまう。
どうやら、クセノンと猫の相性はいいようなので、
カメラを構えて自分の目を見せないように近付いてみる。


奥に、松本駅構内で線路を挟んで駅員さんと会話をしてる乗務員さん。


登場当時のクセノンのレンズ構成。
後のウルトロンに通じる所があり、絞りを挟んで前群はエルノスターに近い。
f1.5の最後群を2枚に分割した構成は、バックフォーカスを伸ばす効果もあり、
後に一眼レフ用の標準レンズに応用される事になる。



8/12訂正
8/23訂正





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最終更新日  2020.08.23 21:39:20
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