淡々とした日常をベースにしたベンダース監督の傑作映画”パーフェクト・デイズ”と小津作品
日独合作で2023年に公開された、ヴィム・ベンダース監督の”パーフェクト・デイズ”。カンヌ映画祭で役所さんが男優賞を受賞し、エキュメニカル審査員賞を受賞他、色んな賞を受賞しベンダース監督最高の興行収入を上げた作品だ。英語圏では脚本の起伏の無さや抑揚を欠いた演技を批判され、左翼思考の評論家などからは金持ちが肉体労働を美化させる為の映画という、しょーもない見当違いの言い掛かりもあったけど、総じて海外でも評価は高かったようだ。この淡々とした日常をベースにした作品は、ベンダース監督が敬愛する小津監督作品と繋がる部分があり、自転車や街中のシーンはロードムービーでもあり、音楽好きには仕事に向かう途中のカセットテープから聞こえてくる、監督が選んだ宝石の様な音楽が堪らない。以下ネタバレ注意!いつも変わらず盆栽の水やりと歯磨きに始まり、朝の缶コーヒーを飲みながら音楽を掛けて仕事に向かい、帰って来れば銭湯と居酒屋の焼酎を求め、寝る前には読み掛けの文庫本を開き、眠くなれば電気を消して就寝。休日には自宅でラジカセを鳴らし、溜まっていた洗濯物をクリーニングしつつ、モノクロフィルムによる銀塩カメラの写真を取りに行き、古本屋で百均の文庫本を仕入れ、いつもと違うちょっと贅沢な飲み屋に赴く。淡々とした日常に繋がる小さな盆栽たちと木々のざわめきの映画。”パーフェクトデイズ”を観てから、そういえば今まで小津監督のカラー作品を観た事がなかったなと思い、いつものレンタル落ちで2作品を手に入れてみた。1962年公開の”秋刀魚の味”は小津監督の遺作ともいえる作品で、嫁に行きそびれた娘を持つ男親の老いがメインテーマだけど、酔っ払いと軍艦マーチが印象に残るホームコメディ。個人的にはモノクロ時代には少々の長回しでも気にならなかったのに、この作品ではストーリーのカット割りが時々冗長に感じられた点が残念だった。1958年公開の”彼岸花”は里見弴(とん)氏原作の小説を元に、いつもの小津監督と脚本家の野田氏で仕上げた初のカラー作品。こちらはまだ未観で、これからのお楽しみ、小津監督のカラー作品を観ると、テーブルや机の上に並んでいるものだけでも、色の配置には相当気を使っているようで、大きさや形を含めてモノクロ時代より、一層拘割っているように思える。作品を印象付けている独特な柔らかい調子の映像は、これも拘りのアグファのフィルムのお陰なのだろう。