光学ガラスで世界をリードしているHOYAの名前が刻まれた135mmf2.8
アレキサンドリアの数学者であるアル・ハーゼン氏(965-1040頃)の光学書には、ギリシャの天文学者だったプトレマイオス氏(100~178y)が”物体の上に透明な凸面を持つ石を置くと物が拡大されて見える”という事が書かれていた。13世紀にハーゼン氏の著書のラテン語訳が出回り修道院で読まれたために、彼らにより水晶やベリル(緑柱石)を磨いた凸レンズが拡大鏡や老眼鏡として使われるようになった。因みにドイツ語でメガネの事をブリレというのは、ベリルからきている。やがて14世紀になると、ベネチアのガラス職人により透明な水晶よりも青い色の方が目に良いという事で透明ではあるけど青緑色をしたガラスが作られ、一番良質なものを眼鏡用として確保された。それから望遠鏡の発達と共に、窓ガラスなどに使われたクラウンガラスに相当する石英にソーダ/酸化ナトリウムと石灰を含んだソーダガラスと、クリスタル食器などに使われたフリントガラスに相当する石英に酸化鉛、ソーダ、酸化カリウム、石灰などを含んだ鉛ガラスの組み合わせによる色消しレンズが作られるようになる。光学ガラスは無色透明で均質な事が重要で、初めて光学用のガラス製造がおこなわれたのは1790年のスイスだった。光学ガラス職人のピエール・ギナン氏はルツボ内で均質になるように攪拌する方法を編み出し、バイエルンのウツシュナイダー氏に説得されミュンヘンの南50Kmに工場を移設する。やがて1807年に助手として若きヨーゼフ・フランホーフェル氏が雇われる。1811年に光学ガラスでは第一人者である筈のギナン氏が作るガラスのバラつきに業を煮やしたフランホーファー氏が、親方で大先輩のギナン氏に文句を言った事で喧嘩になりウツシュナイダー氏が仲裁する事態に。結局は、仲違いとなってしまいそれ以降はフランホーファー氏がガラス製造から研磨まで全て取り仕切るようになる。お陰でそれまでは職人の勘に頼っていたガラス製造を科学的に管理する様になり、ガラスの均質性が高められ、色んな種類の光学ガラスが作られるようになっていく。それらは各ロットでガラスのサンプルを取り出し精密な屈折率を計測する事により分類していく事により、今に続く光学ガラスの基礎が作られたのだ。因みにドイツの光学ガラスで有名なイエナのショットは1889年に設立されていて、今では120種類のラインナップを誇る。◎家にある光学ガラスの例英・チャンスピルキントンのサンプルは某光学メーカーに勤めている友人から頂いた物で大きさは10cm角で厚さは2cm。サンプルのコバを見ると良く分かるけど、光学用ガラスは鏡に使われるような板ガラスの緑色(主に鉄分)の着色が無く透明でクリアな事が分かる。但し少し茶色っぽい感じがあるので、短い波長を通しにくい低分散系のフリントガラスだと思う。もう一つはアンプの下に敷いてある丸いもので、直系30cmで厚さは5cm。これは透明な大塊が得られてポピュラーなクラウンバリウム系の光学ガラスだと思う。日本というよりも世界でトップクラスの光学ガラスメーカーであるHOYAは、1941年に東京・保谷町で創業して光学ガラスを作っていた東洋硝子製造所にルーツがある。いわゆる軍需工場だったようで1944年には(株)東洋光学硝子製造所に改組。戦後の1945年10月には早くもクリスタルガラス食器を製造。1947年には(株)保谷クリスタル硝子製造所に。1952年になると光学ガラスのBK7の製造開始。1960年に(株)保谷硝子に変更。以降、ガラス食器や光学硝子に関わるものに携わり、1987年には非球面のモールドレンズを発売。カメラ関係でも2006年にペンタックスを経営統合をしたりして2009年には食器や花瓶などのクリスタル事業を停止。HOYAの光学ガラスはオハラの製品と共に世界をリードしていてドイツブランドの光学製品にも日本製の光学ガラスは無くてはならないものになっている。言って見れば今では世界標準を日本が握っているのだ。光学ガラスの対応表の一部を見ただけでHOYAの世界トップを走っているのが良く分かると思う。手元にHOYAの名前が刻まれた135mmf2.8のレンズがある。昔、アメリカの通販で見付けたもので、ニコンFとM42マウントの2種類。恐らく輸出用だった思われ、国内では見た事がない。アメリカ市場でも余り見掛けないレンズで、135mm以外の焦点距離は遂に出会う事は無かった。HOYA HMC135mmf2.8の作例(全て銀塩写真)山間の畑ではソバの花が真っ盛り。白いソバの花の向こうにはワイン用のブドウが育っている。元は田んぼだった場所が銀色の綿毛で光っている。最近の暑さは農作業には辛い。左手にハサ掛けの稲で、右手には稲わらを活用するためのニュウ。昔の田んぼでは普通だった。畑の端には案山子が二人。緑、黄、橙、赤。カエデの色見本。陽光を浴びて輝く紅葉。今時は、コンバインで稲の刈取りが終わると粉砕して排出された稲わらを燃やすかそのまま放置されて肥料に。雪が降って白くなった八ヶ岳連峰が夕方の斜陽光で輝いて月が登る。