イスコ・ゲッチンゲン(Isco Göttingen)のトリプレット標準レンズ50mmf2.8イスコター
ドイツのキワモノレンズの一つに、イスコというのがある。1936年に、"Jos. Schneider & Co., Optische Werke, Göttingen"という名前で設立されて、レンズの製造は、ヨゼフ・シュナイダー氏とアルブレヒト・トロニエ氏により開始。1941年になると、ライヒシュトラッセ27の兵舎の隣に工場が作られた。最初から軍需産業に関わる企業として成立して、軍事の製品コードは”kqc”であった。戦時中は、航空カメラ用に4万5千本のレンズを製造。レンズ銘はクセナーとウルトロンだったようで、例えば、クセナー12.5cmf2は航空偵察レンズとして使われた。戦後の1946年には、早くも映画用のプロジェクションレンズを生産開始して、1947年には50人の従業員がいたようだ。1953年には、ワイドスクリーン用のアナモルフィックアタッチメントを製造開始して、1960年代には600人の従業員を雇用していた。写真用レンズとしては、Westar, Westanar, Westron, Westromat, Isco-Mat, Iscotar, Isconar, Tele-Iscaron, Iscorama などがある。1982年に親会社のシュナイダーが破産すると、クルト・リントシュテット氏は他の2人と共に引き継いでIsco-Opticに改組。その後、1980年の終わり頃に、ゲッチンゲンのアンナ・ファンデンフェック・リンクに施設を移した。1990年にはデジタルプロジェクション用レンズを生産開始。デジタルシネマに関して、アメリカのテキサス・インスルメンツと関わってきたが、残念ながら2003年に破産してしまう。翌年の2004年夏には、82人の従業員と共にスイスの投資家に買収される事になった。それから、元の親会社シュナイダーへ、"Schneider Kreuznach ISCO Division GmbH & Co. KG"という名前で復帰。2011年に、ISK Optics GmbHと再編されてから、2014年には親会社のシュナイダーに統合された。ISCOは、Losif Schneider Optikの略というけど、何か文字を入れ替えて遊ぶアナグラムのようなものだろうか。 追記:Josef Schneider Companieという事らしい。 ”J”はドイツ語では”ヤ”行なので、同じ発音の”I”にしたのは、 英語圏でも同じ呼び方にしたかった為と思われる。エディクサ・ウイルジン向けのレンズを供給したせいで、エディクサ銘を刻まれたレンズが多い。フィルター付きのイスコター50mmf2.8。実は、レンズ後端が出ていて手持ちのカメラではEOS・RTにしか使えない。このレンズの特徴は鏡胴のデザインが何とも素っ気ない感じで、どことなく元軍需工場製だなという雰囲気がある。ヘリコイドを含めた工作精度も高くて、全体にキッチリとした造りだ。イスコ・ゲッチンゲン・イスコター50mmf2.8の作例(全て銀塩写真)借り入れ間近の田んぼの寸景。昨年の稲の生育は、7月までの悪天候で散々だったので心配したけど御覧の通り。ただし、いつもより丈が短い。同じイネ科のススキもフワフワしてきて、そろそろ種を飛ばす段階になっている。広いソバ畑も花が真っ盛り。10月の新ソバが楽しみになる光景。クロースアップしたソバの花。背景にはうっすらと虹が見えている。栗の木を取り囲むように咲いているソバ。蕎麦は何の手入れが無くても勝手に育っていくくらいにタフな植物。イスコのトリプレットは、以前にも紹介した前玉回転式の安レンズの、WESTAR100mmf4.5もそうだけど意外に描写はしっかりしている。同じく以前紹介した、東側で作られたトリプレットタイプの標準レンズ、ルトヴィッヒ・メリター50mmf2.9と比べても面白いと思う。2021-12-16追記