2018.02.03

アナログ時代の金字塔/シェフィールドLabのダイレクトカッティング・レコード

カテゴリ:オーディオ
アナログレコード全盛時の後半には、オーディオ的にも色々と面白いものがあった。

当時はデジタル録音も新しい技術の一つで、
アメリカのテラークは「1812年序曲」で好き者を唸らせた。
機材でもソニーのPCM-F1はスウェーデンのBISレーベルでも長らく使われて、
たったの14ビット機ながら、音質というものは機材よりも、
エンジニアの腕であるなと再認識させてくれた。

他にも、DMM=ダイレクト・メタル・マスタリングというのは、
超音波を使ってラッカー盤ではなく、メタルマスターを直接作る技術。

ハーフスピード・カッティングというのは、
カッティングスピードを半分に落として、
ゆっくりとラッカー盤を作る技術。

色々あったけど、最もオーディオ的に良かったのが、
演奏した音源をテープレコーダーで録音して後で編集するのではなく、
そのままカッティング・マシンに送り込むダイレクト・カッティング方式であった。

アメリカのシェフィールドが特に有名で、他にもM&Kリアルタイムも凄かった。
どちらも当時購入して手元にあるけど、最初に聴いた時の印象は今でも忘れられない。

シェフィールドはカッティング・マシーンと並行して、
2トラックのテープレコーダーも回していてくれたお陰で、
それを元にCDを出してくれている。

オリジナルの管球式のマイクや機材を駆使した、
歪感が無くてリアルな独特な音は、今聞いても感激する。


シェフィールドを創立し、ずっと音楽に携わってきた、
ダグラス・サックス氏とリンカーン・マヨルガ氏は、
当時のLPの音よりも、テープレコーダーを使わない1930年代に録音された、
アビーロード(EMI)で録音されたピアノの音の方がずっと良い音である事を知っていた。

そこで、’40年代から殆ど変わっていない録音スタジオを見つけ出して、
10ドルで古いRCA77・リボンマイクと、’47年製のRCAのカッティング・ヘッドと、
’29年製のヴァイタフォンのカッティング・マシンという、
初期のトーキング・ムービー用の骨董器材を使って、
自身の演奏を直接ラッカーコーティングしたアルミディスクに録音してみて、
その音に衝撃を受けたのである。

実は、オーディオマニアでもあるタモリさんも、古いSP盤の音を評価していて、
その筋では、SP盤は新しい録音よりも音が良いものがあると言う事は有名な話である。

ダグラス氏とマヨルガ氏は実験の結果から、
新しいウエストレックスのカッターと、スカリーのカッティング・マシンと、
テレフンケンのマイクを使ったら、さぞ良い音が出来るだろうと期待したのは当然であったが、
散財して色々やった挙句に新しい機材では全く思っていた音にならず、
結局はオリジナルの器材を開発することになるのである。

こうして誕生したシェフィールドのブランドは、
当時感激したイギリスEMIの音に敬意を表してのもののようだ。

管球式のワンポイント・マイクに始まるオリジナル機材の音は、
シェフィールド・マジックともいうべき独自のもので、
最初の一音が出ただけで、それとわかる特徴がある。

家にはシェフィールドの音楽ソフトは、
アナログレコードが10枚ほどとCDが20枚ほどある。
どれも、概して歪感がなくて生々しいという、
他のレーベルとは一聴して分かる次元の違う音が特徴である。


アナログレコードの一例。ジャケットにあるアサガオがトレードマークだ。
写真はLab.8/ロミオとジュリエットで2枚ある。右側は後に見付けた未開封品。
クラッシックでも独特の歪感のないナチュラルサウンドが聴ける。

普通はシンフォニーのレコードとなると、殆どが実際にはマルチマイクによる疑似ステレオである。


衝撃的な登場だったドラムソロのレコードとトラックレコード。

ドラムレコードは、A面とB面それぞれに即興のドラムソロが録音されているだけ。
楽器の位置や高さが分かる、ハードでシャープでダイナミックでダルな感じは一切無い音。
振動板の重いスピーカーや巨大なマルチスピーカーでは真価は分からないと思う。
今でもこれを超えるドラムの録音は無い。

トラック・レコードも凄い。
シェフィールドは電気楽器の音も独特で、
ボリュームを上げても煩くないのは音に歪が無いからだろう。
逆に言うと、普通はいかに弄り回されて歪んでいるか良く分かるレコードである。
各楽器の分離とドラムが聴きどころだ。

これをまとめたCDも幾つかあって、デジタル化されても音の本質はいささかも変わっていない。
SACDとかハイレゾとか、方式だけでは超えられないシェフィールド独特の音である。


日本の鼓童もシェフィールドに録音を残してくれている。これは1985年盤のCD。
総じてシェフィールドはオフ気味の録音が多いけど、これは一段とオフ。
ボリュームの目盛りを普段よりも3つくらい上げた方が良い。
Dレンジは広大で歪感は皆無。





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最終更新日  2018.06.27 16:46:23
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