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カテゴリ:日々雑感
そのイタリアンレストランは、街中の大きな交差点に面したボロボロの雑居ビルの3階にあって、もちろんお店まではエレベーターなんかは無いのでぎょっとするほど凄く狭い階段を歩いて登らなくてはならなくて、でも途中の2階の踊り場にはなんかゴミみたいのも置いてあるし、全体に薄暗いし、ちょっと入るのに勇気がいるお店でした。
さらに悪いことに、そのボロい雑居ビルは形もなんだか三角っぽくておかしくて、そのせいでお店の中もウナギの寝床みたいに細長でちょっとおかしな空間でした。 じゃあなんでそんなお店に入ったのかというと、私はその交差点を良く通っていて、そのぼろビルの3階にイタリアンレストランがあることは以前から知っていて、よく見上げて観察をしていたのです。最初は、「3階かー、商売には厳しそうだな。いつまで持つかな。。。」と思っていたのですが、何年経ってもどうしても潰れないし、お店の大きな窓越しにはいつもお客さんがいる気配がしているので、「うーん、これはきっといいお店なんだな。」と推測するに至ったのです。 そうして入ったお店は、まだ若そうで、でもかなり気難しそうな男性のシェフが1人でやっていて、もしも混雑したら全然回らなくなりそうな感じでした。メニューはパスタなどのシンプルで素朴なイタリア料理が中心で、どれもリーズナブルでかつとても美味しくて、私の様なバリュー投資家にはとてもいい感じのお店でした。 でも、このお店の長所はそこではありませんでした。長細い店内にはカウンターと、後は大きな窓際のテーブル席しかないのですが、このテーブル席から、下の交差点を行き交う人々が実に良く観察できるのです。3階と言っても背の低い雑居ビルなので2.5階くらいの感じで、歩きいく人の表情まで見て取れます。そしてみんな、古ぼけた雑居ビルなどに興味はないので、こちらを見上げる人もいません。 ところで私の母親に趣味を聞くと、昔から「人間観察。」と即答するのですが、その血を引いた私も「じっくりと人を観察する」ことが大好きで、このレストランはそんな私にはぴったりのお店なのでした。美味しいパスタを頬張りながら、じーっと地上の交差点を過ぎ行く人々を飽きもせず眺めるのは、自分には極上の時間でした。 そしてその時、ふと、気付いたのでした。 結局自分が欲しているのは、「もっと高い所からの景色を見ること。」ただそれだけなんだと。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Apr 18, 2019 08:16:26 PM
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