2020/11/29(日)08:36
7. 適応的市場仮説。
さて今日は株式投資本オールタイムベスト110位
適応的市場仮説 (アンドリュー・W・ロー著、東洋経済新報社、2020年)
の第7弾です。
今日も 第6章 適応的市場仮説 から。ついに議論の本丸です。
思考の速さで進む進化は、一世代に1回ずつしか進まない進化、つまり繁殖の速さで進む進化よりもはるかに効率的で強力だ。思考の速さで進む進化があるからこそ、私たちは無数の状況でどんどん脳の機能を適応させ、生存確率を大きく高める行動を生み出していくことができるのだ。
これこそが適応的市場仮説の核となる考え方だ。
基本的な考え方は、次の5つの重要原理にまとめることができる。
くぉー、ついに本丸に辿り着きました。! 続きを見ていきましょう。
1.私たちは常に合理的なわけでも常に非合理的なわけでもない。私たちは進化の力によって特徴や行動が形作られる生物学的存在である。
2. 私たちの行動にはバイアスがあり、私たちは一見すると最適でない意思決定も行うが、過去の経験に学び、否定的なフィードバックに応じてヒューリスティックスを見直すことができる。
3. 私たちには、先を見据えた「もし~なら」分析をはじめとする抽象的思考、過去の経験にもとづいた未来予測、環境の変化に対応する準備を行う能力がある。これは思考の速さで進む進化であり、生物学的な進化とは異なるが、まったく別物というわけではない。
4. 金融市場のダイナミクスは、私たちが行動や学習を行い、周囲の人々や社会、文化、政治、経済、自然の環境に適応する際の相互作用によって形成されるものである。
5. 生存こそが、競争、革新、適応を促す究極の原動力である。
適応的市場仮説では、人々は現在用いているヒューリスティックスが「十分に満足できる」ものなのかどうかは確信しえない。試行錯誤によって結論を出すしかないのだ。
ハーバード・サイモンの限定合理性の理論と同じように、適応的市場仮説なら、近似的にしか合理的と言えない経済行動、または合理性にあと一歩届かない経済行動も簡単に説明がつく。いや、それにとどまらず、完全に非合理的に見える経済行動だって説明できるのだ。
進化生物学の言葉を借りるなら、そういう行動は「非合理的」ではなく「不適応」と呼ぶほうが正確だろう。
海に漂う透明な物体を栄養豊富なクラゲと見なすよう進化してきたウミガメが、プラスチック袋を本能的に食べてしまうのも、不適応な行動の例だ。それと同じで、長い上げ相場の最中にポートフォリオの運用能力を養った投資家が、バブルの絶頂期近くで株を買ってしまうのもまた、不適応な行動の一例だ。
ふー、ローの適応的市場仮説、素晴らしいですね。マーケットの「様々な現実」を全て納得できる形で説明できます。穴だらけの効率的市場仮説を楽々超える、2020年現在での「最強理論」であると思いますね。(続く)