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カテゴリ:株式投資全般
さて今日は株式投資本オールタイムベスト127位
ビッグミステイク (マイケル・バトニック著、日経BP、2019年) の第2弾です。 今日は、本書中で最高の出来である、第9章 ビル・アックマン 自説を引っ込めろ から。 投資家はたいてい、それまでの信念を捨てることが大嫌いだ。市場リターンに追いつけない投資家が多いのは、自分の価値観に反する情報をうまく咀嚼できないからだ。 このバトニックの言葉は、「投資の真実」をぐさっと突き刺しています。非常に良い表現ですね。 2012年12月20日、アックマンのプレゼンテーション「大金持ちになりたいのは誰か」を聞くために500名の聴衆が集まった。アックマンは、ハーバライフがピラミッド・スキーム【マルチ商法】のビジネスだと批判し、この空売りから得た利益を「血の金」と呼び、慈善事業に寄付すると言った。 アックマンはハーバライフでこの後「歴史的な大敗」を喫することになるわけですが、私たち投資家が学ぶべき大切な教訓が1つあります。それは、「誰かを罰しようと思って投資をしてはいけない。」ということです。 正義感を持つことは大切なことではありますが、投資家としてはそれはあくまで「自らの胸の内ポッケ」にひっそりと静かに持っておくべきものです。投資家は「神」ではありません。全知全能のマーケットの前では、途轍もなくちっぽけで、無力な存在なのです。 マルチ商法ビジネスは確かに倫理的な問題があるやり方かもしれませんが、だからといって自らの正義感から義憤に駆られて空売りをするというのは、自らの「感情」に「理性」が負けてしまっている危険な状態だと思います。そしてアックマンは自ら犯した「大罪」の報いを、この後たっぷりと受けることになったわけです。 長時間にわたったプレゼンテーションの翌日から3日間で、株価は35%下がった。この急落を見て、最も強力なライバルの一人が参戦した。 カール・アイカーンとダン・ローブ対ビル・アックマンの直接対決は、アックマンが自説を堂々と主張したことに端を発したものだ。 いやあ、ここでのバトニックの文章の切れ味は尋常ではないですね。自らがありとあらゆる失敗を繰り返してきたことの「報酬の果実」でしょうか。(笑) またこのアックマンの失敗からはほかにも多くの教訓が得られます。それは1つには「買いは家まで、売りは命まで。」とも言われる「損失が無限大に膨らむ恐れがある、空売りの怖さ」であり、もう1つは「自らの投資ポジションを公言することの危険性」です。 この「投資ポジションを公言することの危険性」は、何よりも「自分が自分自身の発言に縛られてしまう。」ことです。そうしないと自己矛盾に陥ってしまうからです。 ガイ・スピア はこれを、 現在の投資について語らない方が良い という印象的な警句で表現しました。ちなみに私もこの危険性を数年前に強く認識し、それからはブログでも「現在のリアルタイムの売買内容」については基本的に書かないように方針を変更しました。そのことによって投資判断の自由度が明らかに増しましたし、また以前よりも精神的に楽に気軽にブログを更新できるようにもなりました。 変幻自在に揺れ動くマーケットでは時が流れれば状況が全く変わることなど日常茶飯事です。なので、「投資の世界では、前言を翻すのは当たり前」です。 私たちは、そういう過酷な、「世間一般の常識とは165度くらい違う世界」で戦っているんですね。 2019年6月、アックマンはついにハーバライフから撤退したと報じられた。 いやあ、このアックマンの章は本当に勉強になりました。読んでいて背筋が凍るくらいでしたね。(続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Mar 17, 2022 01:08:45 PM
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