今日は私が主力株選定に使っている、「みきまるの7ファクターモデル」のお話をします。
さて自分は投資における「儲け」の源泉となるプレミアムがあり、その長期的な有効性が証明されているファクターを持つ銘柄を組み合わせて戦うことによって、安定的にベンチマークとなる指標(私の場合はTOPIX)を超えるパフォーマンスを上げることを目指しています。
具体的には、ファーマ=フレンチの3ファクターモデル(市場ベータ・サイズ・バリュー)をベースとして、その後の学術研究で有効性が明らかになったモメンタムとクオリティ、更にはローレンス・コナーズが見つけた恐怖、後は自らが専門とする優待、この合計7つを「武器になる」ファクターとして設定しています。
そして主力株の選定に当たっては、「少なくとも最低1つのファクターが強く点灯している」ことを条件としています。投資の世界はどこまでも自由な所ですが、だからと言ってむやみに藪に向かって鉄砲を打っても仕方がありません。「規律のある自由」が大切であると考えています。
それでは次に各ファクターの説明とその具体的な使い方を見ていきます。
まずは市場ベータ(市場リターンから1年物Tビルのリターンを引いた値)です。日本株市場のリスクプレミアムは、ファクター投資入門によると1966~2015年で4.0%、1900~2015年で6.2%なので、超長期でみて有効なファクターなのは間違いないです。私はこれを根拠として「いつもニコニコ全財産100%フルインベストメント」を貫いています。
次にサイズ(小型株のリターンから大型株のリターンを引いた値)です。これは小型株の方が大型株よりも超長期で見た場合の成績が良いという現象で、ほぼ世界中の市場で観察されています。そして日本株市場では特に時価総額50億円以下の超小型株のパフォーマンスが優れているというデータがあり、私はそういった銘柄群を以前から狙い撃ちして戦っています。
バリュー(バリュー株から成長株のリターンを引いた値)は、PBR、PER、PCFRなどの伝統的な指標のどれでも統計的な優位性を示しています。ただ私は「PBRは愛で、PERは恋」と言う哲学を持っています。その心は、PBRは長年連れ添った老夫婦の様に柔らかく永続するもので、PERはひと夏の恋の様に激しくて強いけど同時に儚くて脆いということです。なので、自分はバリュー指標の中ではPBRを最重要視して戦っています。
モメンタム(直近で優れたパフォーマンスを上げた資産が、将来も引き続き、少なくとも短期間は優れたパフォーマンスを示し続ける現象)は、1997年にマーク・カーハートが自身の論文で初めて使った言葉ですが、非常に威力のあるファクターで「パフォーマンスキング」とされています。
自分は極めて逆張り志向の強い人間で、「この銘柄はモメンタムがあるから買おう」とは単純にはならないのですが、持ち株が上昇し始めて既にバリューじゃなくなっても、株価が下がり始めない限りつまりモメンタムを失わない限りは我慢してホールドしていくという意味で使用しています。
収益率(評価額に関係なく、収益率が高い会社のほうが収益率の低い会社よりも高いリターンをもたらす傾向)とクオリティー(収益率よりも幅広い特徴で、質の高い会社は収益率が高いだけでなく、財務レバレッジや営業レバレッジが低く、収益の変動が小さく、資本回転率が高く、個別リスクが低い)は、以前の自分は重視していませんでした。ただファクターとして有効であると学んだので、今は銘柄選定基準に入れています。
クオリティが高ければバリューが足りなくても買っても良いことになったのは私にとっては選択肢が増えて大きな福音となりました。具体的にはグレアムのミックス係数(PBR×PER)が22.5を超えるような子は以前はなかなか手が出なかったのですが、最近は質が高いと思えばそこを評価して買うようになりました。
恐怖(市場で恐怖が高まるほど、証券価格のゆがみは大きくなる現象)は、 ローレンス・コナーズが名著「恐怖で買って、強欲で売る」で示した概念 ですが、我々人間の生き物としての根源的な本能に根差した優位性なので、効果が薄れにくくて非常にパワフルなファクターであると考えています。
そもそも、 バフェットが世界一の投資家になれたのも、彼が自らの恐怖の感情を自由自在に操ることが出来て、「市場が歪む」瞬間を逃すことが無かったから です。ちなみに私はバフェットはバリュー・クオリティ・恐怖の3つのファクターを主に利用していると考えています。
私のこの恐怖ファクターの使い方としては、市場の暴落時には持ち株を絶対に売らない、余力の範囲で果敢に買い向かうというのが1番ですが、もう1つ「市場参加者が先行きが真っ暗であると恐怖を感じているセクター」を喜んで買うという風にも使っています。具体的に言うと2020~22年の地銀株とか、同じく2022年のテレビ局とかが該当します。また2025年現在で言うと、製紙・自動車部品なんかが該当しますね。
優待(沢山の銘柄をそれぞれ最小単元買うことによって実質利回りを上げるやり方)は、私が25年間実践しその有効性を身をもって証明しているものです。これは資金量の大きい機関投資家にとっては無意味ですが、資金力が限られた我々個人投資家にとっては明白に「武器」になるものです。
次に私の2025年現在のポートフォリオ最上位銘柄陣に具体的にどのファクターが点灯しているかを説明してみます。
PF時価総額1位の 009540韓国造船海洋 は、この1年間の力強い株価上昇によりモメンタムファクターが強烈に点灯しています。また近い将来に業績の急改善によってバリュー・クオリティーの両ファクターも点灯することになると予想しています。
2位の 7932ニッピ は、バリューファクターが強く点灯、サイズファクターも点灯、優待ファクターも点灯しています。
4位の 3539JMホールディングス は、クオリティファクターが点灯、優待ファクターがギラギラに明るく点灯しています。
8位の 7228デイトナ は、バリュー、サイズ、クオリティ、優待の4ファクターがバランスよくじんわりと点灯しています。
このように主力株の選定に当たっては、少なくとも1つのファクターが強く点灯していること、そして出来れば同時に複数のファクターが光っていることを条件としています。
これからも独自開発したこの「みきまるの7ファクターモデル」をベースとして、ここ日本市場で命ある限り戦い抜いていきたいと考えています。