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カテゴリ:中学生のころ
中学生の頃、私は美術部に所属していました。
ほとんど毎日、油絵を描いていたわけですが、この油絵の具、制服に付いて時間が経つと、取れなくなってしまうのです。 中学校の制服はセーラー服。 冬服は紺で、夏服は白。 この夏服には、長袖と半袖2種類あって、どちらを着てもいいことになっていました。 ある夏の暑い日のこと。 部活が終わって、片付けをしていました。 ひとりの先輩が、美術室の後ろにある流し台で、ジャージャー水を流しながら、何事かを…。 「先輩。何してるんですか?」 「ああ、これね。」 後ろから覗いた私たちは、びっくり。 「ええっ。……いったい何を…。」 「制服を洗ってるのよ。」 「あ、洗ってる?」 私たちが驚いたのも、無理はありません。 なんと先輩、制服を着たままの状態で、夏服の長袖の部分を、ゴシゴシ洗っているのです。 「なぜ、こんなことを?」 「だって時間が経つと、油絵の具、取れなくなっちゃうでしょ。」 「はあ…。」 「油絵の具付けて帰ると、母親に叱られるのよ。」 「はあ…。」 確かにその先輩、油絵の描き方が激しくて、白い袖にいつも点々と油絵の具が…。 「でも冷たくないですか?」 「ああ、大丈夫、大丈夫。」 「濡れたまま、帰るんですか?」 「そう。 …夏だから、このまま自転車に乗って帰れば、家に着く頃には、丁度乾いてるのよ。」 ええーっ。 このまま、自転車に乗って帰るんですか。 思いがけない行動に、驚いてしまいました。 やはり芸術を志す者は、普通の考え方をしていてはいけないのでしょう…。 私たち後輩が、先輩を尊敬した一瞬でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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