芸能人の歯…のようです
ある日の彼と彼女。最近、前歯を綺麗に治した彼女。でも少し気になる事があって、微調整をしてもらいました。「うーん。」「なに?鏡ばっかり見て。」「やっぱり、前の方が良かったかなあ。」「そんなことないけど。」でも、前は女優の歯みたいだ…って言ってたでしょ。今度は何故、何も言わない?「ねえねえ。」「…だから、おかしくないって。」「でもねえ…。」何度もしつこく聞く彼女。少々疲れた彼、こう言いました。「あのさ。好きな人なら、どんな歯でもいいんじゃない?」「えっ…。」「…?」「好きなの?」「はい?」いやいや。そういうことじゃなくて。これはあくまでも一般論で。あきらめない彼女。なおも聞いてきます。「あのさ。こう第三者の客観的な意見を聞きたいわけ。」「えーっと…。」「だから、この歯よ、歯。」あ…歯ね。どぎまぎしてしまったではないですか。「えーっと…芸能人みたいだから、いいんじゃない。」「そう…それよ、それ。それを聞きたかったのよ。」ふーん、そっかあ。芸能人かあ。ひとり満足する彼女。「だってこうでも言わないと、ずっと聞き続けるでしょ。」彼女に聞こえないように、ボソッとつぶやく彼なのでした。