引越しの前のこと
中学生の頃のある日。部活が終わって、家へ帰ろうとした時。ひとりの男の子に、呼び止められました。見ると同じ美術部の同級生。「あの…。」「は、はい。」「あの…一緒に帰ってもらえますか。」「は?」何?何なの?同級生だし。別にいいけど…。「はあ、いいですよ。」あまり話をすることはありませんでしたが。なんとなく一緒に歩いて。そろそろ家に着くという頃。「ありがとう。」「はあ…。」ありがとう?さよなら…じゃなくって?なんだかよく分からないままお別れして。次の日学校へ行って、全ての謎が解けました。その男の子、突然転校することになったのです。その日が最後の日。油絵を描くのが得意だった彼。最後に一枚の水彩画をくれて。きっと将来は有名な画家になるんじゃないかって、皆で噂していたのですが…。世に名前が出てくるのは、まだ先のことなのでしょうか。