自閉症を扱ったドキュメンタリー映画「The Reason I Jump」
Hello, Milkywayです。お元気ですか? 20210216東田直樹の著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』をもとにした、イギリスのドキュメンタリー映画「The Reason I Jump」(邦題「僕が跳びはねる理由」)が、4月2日から公開される。公開に先立って、この映画を観ることができた。第一印象は、その映像の美しさと、音の効果のすばらしさ、そして観た後の、言葉にできない感動と、嬉しさと、希望だった。自閉症については、自閉症スペクトラムの子どもさんをもつ友人がいたり、自閉症の子どもが、世界を広げていく過程を、実話を元に描いた絵本Bear Shapedを読んだことがあって、ずっと長い間、気になっていた。そして、自閉症の人たちに対する先入観や差別意識が存在することも、気になり続けてきた。上記のような体験があっても、情けないことに、自閉症への先入観が私の中にも存在していて、そのことが、私がいっそう自閉症のことに、注意が向く要因になっていたと思う。しかし、この映画を見て、私のこの先入観の大部分が解消された。明るい希望を持てたのである。自閉症の人たちとのコミュニケーションは可能だし、その人に適した表現手段さえあれば、特段の問題なく接することができると思えた。自閉症に少しでも関心のある方には、そして今までなかった方も、一人でも多くの方々に観ていただきたい映画である。【原作『自閉症の僕が跳びはねる理由』について】この本は、自閉症を抱える作家・東田直樹が13歳のときに執筆した作品で、自身の内面世界、思考や感情や記憶を、言葉で表現した作品で、出版と同時に注目をあびた。それと同時に、大きな感動を与え、世界30カ国以上で翻訳出版された。2007年の発表以後、117万部を超える大ベストセラーとなっている。【原作の英訳後の受け止められ方】この作品の翻訳出版の後、多くの新聞や書評誌が高い評価をし続けた。いくつかを紹介する。NEW YORK TIMES BESTSELLERは、なかでも長い書評を掲載した。ごく一部だけだが、紹介する。このThe Reason I Jumpのような本は、今まで読んだことがなかった。非常に頭が良く、自己洞察に優れた、しかも魅力的な13歳の、自閉症をもつ少年が、自ら感じたり、考えたり、洞察できたことを書き綴った作品である。 ・・・・・その内面世界は、我々が考え得られなかったほどに、繊細で、複雑なのだ。 ・・・・・本作の中で、著者は、自閉症の人々に向けられる質問「話すときになぜ目を見ないのか」「なぜ大きな声で、変な話しかたをするのか」「なぜ、ジャンプするのか」などなど多くの質問にも答えている。この作品の英語への翻訳を手がけた、自身も自閉症の子どもをもつDavid Mitchellは“It is no exaggeration to say that The Reason I Jump allowed me to round a corner in our relationship.”(誇張でもなんでもなく、この本は、息子と私との関係を大きく前進させるものとなった)、と述べている。そして、この書評はこう締めくくっている。“Naoki’s book, in its beauty, truthfulness, and simplicity, is a gift to be shared.“この作品はそのシンプルさと、真実と、美しさゆえに、われわれへの「贈り物」となった。みなで分かち合いたい。その他の書評も紹介しよう。Chicago Tribune (Editor’s Choice)は“This is an intimate book, one that brings readers right into an autistic mind.”(本作品は、自閉症の方々の心の中へと、読者を入らせてくれる)。Whoopi Goldberg, People は“Amazing times a million.” (何百万回もの驚愕)。The Times (U.K.) のAndrew Solomon,は “The Reason I Jump is a Rosetta stone. . . . This book takes about ninety minutes to read, and it will stretch your vision of what it is to be human.”(この作品は、ロゼッタストーンである。わずか90分で読めるが、人間への認識と理解を解く鍵を我々に与えてくれる本である)。The Boston Globe紙も“Extraordinary, moving, and jeweled with epiphanies.”(類いまれな、かつ感動的な、珠玉のエピファニーである)。出典はhttps://www.davidmitchellbooks.com/book/the-reason-i-jump/より原作は、これほどの高評価と、驚きをもって迎えられた本であった。【翻訳者とプロデューサーの出会い】さて、原作を英訳したのは、イギリスのベストセラー作家デイヴィッド・ミッチェルと、その妻ケイコ・ヨシダで、デイヴィッド・ミッチェルは、トム・ハンクス、ハル・ベリー主演の映画『クラウド・ アトラス』の原作者として知られる作家である。 日本に滞在していた経験もあるミッチェル氏は、自らも自閉スペクトラム症の子息を育てている。この英訳を目にしたのが、この映画のプロデューサーを務めた、ジェレミー・ディアとスティーヴィー・リーの二人である。この二人は、本映画に出演しているジョスの両親でもある。つまり、自閉症の子どもさんを育てている作家夫妻と、プロデューサー夫妻が出会ったわけである。この二組の両親による映画だからこその、自閉症の方々への深い理解と、温かい眼差しが、全編に満ちているのだ。この映画について、原作の翻訳者ミッチェル氏は「東田直樹の『自閉症の僕が跳びはねる理由』がそうであるように、この映画は私たちに“普通とは何か?” という疑問を、改めて我々に問いかけている。自閉症と自閉症ではない人たちの世界を、繋ぐ架け橋となる、優しい革命的な作品である」と述べている。【映画】さて、映画には世界各地に住む5人の自閉症の少年少女が登場する。イギリス在住の上述のJoss, インドに住むArmit, シアラローネのJestina, アメリカに住む若者BenとEmma、そして日本人の少年が舞台回しのような役割で描かれる。映画は、彼らの日常の姿とその家族の証言を通して、彼らの目に映る世界がどのようなものなのか、また健常者とどのように異なるのかを、目を見張るような映像表現や音響効果を駆使し、映画を観ている人が、疑似体験しているかのような、作りにしている。「自閉症者の内面が、その行動にどのような影響を与えるか」が、観客が実感できるのである。私が感動したもう一つの理由は、それだけではない。親たちが子どもたちをあるがままに受容し、彼らを理解し、彼らとともに成長している姿だった。世間の差別や偏見にさらされながら、両親や友人たちは、彼らを温かく見守り、支え、彼らの未来への人生に、協力する。それらが、決して義務的でも教育的でもなく、ごく自然に、愛情深く行われているのだ。私はそれに胸を打たれた。もう一つ、映画を見終わった後、私の中の先入観の払拭と、大きな希望を持てた基となったのは、画家としての活動をするArmitと、アメリカに住む青年BenとEmmaだった。Armitの絵は、自分が見る世界は多面的であることを描いていて、その絵は、一時期のピカソの絵を思い起こさせた。彼女の絵は、一面的にしか物事を観ていない私の視点を、問い直させるものだった。さらに私が感動したのは、アメリカに住むBenとEmmaだ。二人は一見、コミュニケーションがとれていないように見える。だが、実は、深い友情と信頼感と、愛情を共有している。そして、青年Benの知性は驚くべきものだ。彼は、自分を表現するための文字盤を手にするや、自分の印象、考えを的確に表現していく。その的確さは、舌を巻くほどなのだ。彼が、東田直樹さんと同様、自閉症スペクトラムの人々の、スポークス・パーソンになってくれたらと願った。Benを観て、自閉症の人たちが、それぞれに適した表現手段を持てたなら、どれほど社会に貢献するだろうか、私たちが、自閉症スペクトラムの方々を理解し、偏見や差別間を消していく活動をしてくれるのではないか?その成果に期待が膨らんだ。こうした、人々の眼を啓き、内容の濃い、こころの厚さを深く描いた作品の監督は、「CHANGE: グリーンピース誕生秘話」で知られるジェリー・ロスウェル。この監督の、代表作になるのではないだろうか。【映画の評価】2020年 世界最大のインディペンデント映画祭としても有名な 第36回サンダンス映画祭で、ワールド・シネマ・ドキュメン タリーコンペティション部門の観客賞受賞、同年 バンクーバー国際映画祭では長編インターナショナル ドキュメンタリー部門観客賞&インパクト大賞をダブル受賞。この映画は「東京・角川シネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国で順次公開。下記のサイトから検索できる。cinemacafe.nethttps://news.yahoo.co.jp/articles/8f6f1ba06b33f9e42cc5a32014129f8f52877ca1