2015/01/25(日)18:27
「風間陽水の依頼簿(カルテ)・464」
カルテ番号 ふ・5(7)
「原さん、ちょっと時間ある?」
教室が終わって、帰り支度をしている彼女に声をかけた。
「大丈夫です。私、時間は結構自由なのです」
確かご主人は普通のサラリーマンだったと記憶している。
夕食の準備などがあるのでは、と遠慮がちの声の雰囲気を察してくれたようだ。
その一言だけでも、彼女が充実している事が判る。
普段は生徒を入れない自宅の方に彼女を案内した。
藤川良恵から彼女を誘ったことなど一度もない。
通常ならば、何か大事な話だろうと構えるだろう。
それなのに、彼女の態度はやわらかかった。
明るく、それでいて落ち着いている。
「コーヒー、紅茶、日本茶、どれがいい?」
「では、紅茶をお願いします」
お構いなく、でも、どれでもいい、でもない。
こういう態度も藤川良恵を感心させた。
原さんは、自分よりもずっと人間が出来ている、と思った。
僅かな態度や会話から、それを読み取った藤川良恵も長年のヨガ教師だった。
(登場する人物・組織・その他はフィックションです)
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