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Minami’s クラブ

*奇跡・真夜中の電話*

真夜中の12時すぎ

普段かかってくるはずのない時間に

電話が鳴る・・・・



旦那が眠そうな声で出て、

下手な日本語で一言言った。


「チョット マッテ」



一番恐れていた瞬間だった。



いつもとは違う時間に



日本からの電話。


何か緊急な出来事があったに違いない。



妹からか?


母、又は父から????



恐る恐る受話器を取ると


少し疲れた声の妹からだった。




妹   「Minamiちゃん寝てた?ごめんね。」




私    「ううん、いいよ。どうしたの?」









妹     「お父さんが事故った。。。











真っ暗な部屋で受話器を持ったままその場に座りこむ私。



心臓はドキドキ、バクバクしている・・・・





私   「あ、相手はいるの?」







妹    「ううん、いないよ。
  

      お父さん一人で電柱に突っ込んだの。



      電柱が真っ二つに折れるほどすごい衝撃だったみたい。


      車の半分ぐちゃってつぶれて、


      救急車の人が到着したとき


      運転手は即死だろうって思ったらしいよ」







私   「そ、それで???お父さん大丈夫なの?」





妹   「今、救急病院にいる。


     目は片方つぶれていて、


     歯も折れちゃってて顔は血だらけだった・・・」






私は気持ち悪くなって一瞬吐きそうになった。



そして妹が続ける・・・


  「私、昨日夢みたんだよね。。。。

   お父さんが一生懸命「ごめんね、ごめんね」って

   謝ってる夢。。。。」




私は涙が出そうになった。






私   「命に別状はないの?」




小さな声で質問すると妹は冷静に答えた。



   「うん、大丈夫みたい。



    あれだけの事故なのに


    どこも骨折してなくて

    頭も打ってもいなくて


    レントゲンで検査したら内臓も大丈夫だったんだって。



    お医者さんがね、


     奇跡ですね


    って言ってたよ・・・・」









父の命を救ったもの。

それはまさしくシートベルトだった。


もしシートベルトをしていなかったら


きっとぶつかった衝撃で体ごと前へ投げ出され


フロントガラスを突き破っていただろう。。。。






救急病院にかけつけた妹と父の再婚相手のJさん。



意識をすでに取り戻していた父は


妹たちを見て無言で涙を流した。。。


片方の目からは普通の涙。


そしてつぶれたもう片方の目からは赤い血の涙がこぼれ落ちたそうだ。。




妹とJさんは車がレッカーされた場所へ行き

無残な姿になった父の車を見た。



後部座席の下に無造作に落ちているCDやカセットテープを


無我夢中で拾い出すJさん。



妹   「Jちゃん、何してるの?」



そう質問するとJさんは答えた




   「これお父さんが好きだったから・・・

   これはお父さんがジェンちゃんによく聞かせていたから・・・」



父のために一生懸命に拾い集めるJさんを見て


「あ~本当に父のことが好きなんだな。。。」と


妹は思った。。。。。




事故の詳しい原因はわかっていない。



事故前後の記憶が全くないという父。


目撃者の話によると、ノンストップで電柱にぶつかっていったという。


悪魔が一瞬舞い降りたのか。。。



それでも父を守った神。



来月70歳になる父を


今はまだ死ぬ時期ではないと神は生かしたのだろうか?



車で走り回る妹に


本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



  「何もできなくてごめんね。ありがとうね。。。」



そう言うのが精一杯だった。




家族に何かあったとき


遠く離れているとすぐに飛んでいけないもどかしさがある。


何もできず、ただ家族の無事を祈るしかないのだ。。。



妹に全てを託し


私は静かに受話器を置いた。




「神様、、、



父を守ってくださってどうもありがとうございました。」




ベットに入った私はそっと手を合わせ、そうつぶやいた。。。。



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